S’ACCAPAU
サッカパウ

毎日野菜を摘んだ能登での経験を東京で昇華させる

椎茸を使ったシグネチャー・ディッシュにかける熱い思い

西麻布にある「サッカパウ」エグゼクティブシェフに吉沢悠椰氏が就任したのは2023年夏のこと。当時まだ31歳という若さだったが、そのキャリアは通常の料理人のものとは違っていた。1992年新潟に生まれた吉沢シェフは、広告デザイナーであった母親の影響で、幼少期から色彩の感覚や美術作品に親しんで育ったという。大学に進んだ吉沢シェフは4年生時にイタリアに半年滞在し、イタリアの食文化に触れて料理の道を志すことになる。しかし仕事の場として最初に選んだのはレストランではなく、金沢にある酒蔵だった。蔵人として勤務した吉沢シェフは、米、水、麹というシンプルな原材料から、緻密なアプローチによって多種多様な日本酒を組み立てる、そのメカニズムに魅了され、この時の経験がのちの食材への細やかなアプローチや、料理、ペアリングを組み立てる思考の土台となる。吉沢シェフが料理人としてのスタートを切ったのは石川県「ヴィラ・デラ・パーチェ」だ。食材を仕入れるのでなく自ら畑に出向き、漁港に足を運ぶ平田明珠シェフの料理感に影響を受け、移転前から長くスーシェフとして活躍する。また「ノーマ」シェフ、レネ・レゼピの発酵に関する大著「The Noma Guide to Fermentation」を読んで発酵に関する実践も重ねた。

地方ではその土地を感じる料理が重視されるのに対し、東京では利用シーンや味としての直感的なインパクトが優先され、能登と同じことをしても響かないと吉沢シェフはいう。しかし能登時代には野菜を畑で摘む生活をしていたので、コースの最初には野菜を自分の手で触って、そのまま口に運んで欲しいという思いが常にあるのだ。

現在の「サッカパウ」では8品のコース仕立てで2ケ月ごとにメニューを再構築している。「枝豆」は枝豆パウダーを使ったビスキュイ、炭で焼いた枝豆、ホースラディッシュのクリーム、枝豆のクリームを使った冷たいトルタ・サラータ。ホースラディッシュが持つ西洋的な辛味がアクセント。「トマト」とは冷製の「ピーチ・アリオーネ」でパスタは岡山県冨士麺ず工房の低加水麺を使用。輪島上田農園のサンマルツァーノを少量のニンニクとオレガミで煮詰め、花咲ガニと発酵プラム果汁で酸味をプラス。「トウモロコシ」はフリウリなど旧オーストリア文化圏でよく見られる焼きクレープ、クレスペッレ・アル・フォルノをイメージ。中身はトウモロコシの魚醤とバター炒めとトウモロコシジュースのベシャメル。クレープをジャガイモの細切りで包んでから焼いてある。金沢産ゴーダチーズの冷たいフォンデュータと甘いトウモロコシのパウダー、スパイスがアクセント。甘さとスパイスのコントラストがフリウリ以北の料理を偲ばせる。

また吉沢シェフが現在突き詰めているのが「シイタケ」だ。これは、「八色(やいろ)椎茸の炭焼き」で、自身は苦手だという椎茸特有の香りを抑えるため、昆布締めにした大ぶりの椎茸を縄で縛って焼き上げる。ひだの中に香りと水分を閉じ込めることで、アワビのような食感と芳醇な旨味が生まれるという。何度もバージョンアップしてブラッシュアップを重ねているというから、吉沢シェフのシグネチャー・ディッシュとして季節を問わず登場するのもそう遠くないことかと思われる。


chef profile

吉沢 悠椰
YUYA YOSHIZAWA

1992年新潟県生まれ。金沢市の酒蔵で蔵人として勤務。この経験がのちの食材へアプローチや、料理・ペアリングを組み立てる思考力の土台となる。石川県白山市のフランス料理店「レ・トネル」を経て石川県七尾市「ヴィラ・デラ・パーチェ」で副料理長を務める。2023年夏、31歳で「サッカパウ」のエグゼクティブシェフに就任。


INFORMATION

東京都港区西麻布1-12-4 nishiazabu1124ビル B1[google MAP🔗]
Tel:03-6721-0935
営業時間:ランチ 12:00~、ディナー 18:00~
定休日:日曜、月曜
公式WEB