Azumi Setoda
アズミ セトダ

瀬戸内を代表するレモンの島に誕生した料理旅館

広島県三原港から船に揺られること約30分、青い海に囲まれた生口島の瀬戸田に到着する。かつて製塩業や廻船業で栄えた瀬戸田には今も古い街並みが残るが、2021年3月この地に誕生したのが築140年の邸宅を改装した「Azumi Setoda」だ。仕掛け人は世界的なラグジュアリーリゾート「アマン」の創業者として知られるエイドリアン・ゼッカ氏。日本の伝統的な旅館が持つ「主人が家族を迎え入れるような温かいおもてなし=ホスピタリティ」に深い感銘を受け、この豪邸を料理旅館として再生したのだ。メインダイニングはディナーのみのイタリア料理だが、2026年にシェフに就任したのが「サローネグループ」でシェフを歴任した青木一誠氏だ。

瀬戸田に移住した青木シェフは自宅の庭で野菜やハーブを育て、さまざまな瀬戸内の恵みをイタリア料理に仕上げている。まずコースの幕開けを飾るのが「レモンと地元食材を活かしたアペリティーヴォ」だ。地元のブランド豚「うつみ潮風豚」のプロシュートコットを巻いたレモン入りグリッシーニ、なかやま牧場の牛肉を使った「モチェッタ」とニョッコ・フリットと自家製の塩レモン、空豆のニョッキ、瀬戸内の地魚「ネブト」のフリットから始まる。

カミナリイカとグリーンピースをイカスミを練り込んだクレープ巻いて食べるフィンガーフードの前菜に続くのが「菜園」だ。これは青木シェフがピエモンテの「ガルデニア」で働いていた頃、毎朝庭でハーブを摘んでから厨房に入っていた思い出に着想を得たシグネチャー・ディッシュ。北川農園の様々な野菜を中心に大根の種や赤く熟したブロッコリー、伏見唐辛子など野菜の可能性を極限まで追求してあり、ピエモンテ伝統のバーニャカウダ・ソースと、玉ねぎとオリーブで作った「土」に見立てたソースで構成している。また野菜の端材はお茶にして、料理と一緒に提供することでフードロス削減と循環を表現している。

「伊吹いりこ」の出汁で炊いたリゾットは魚介の端材をすべて煮込んだ「カッチュッコ」風のスタイル。これはかつて潮の流れを待つ港町=潮待ちの港、として栄えた瀬戸田の歴史を表現してあり、様々な魚介類の端材を無駄にせず使用している。マナガツオには世羅町産「松ナメコ」とアオサのソースを合わせ、和歌山のトマトに広島「三良坂フロマージュ」のリコッタを合わせたニョッケッティ・サルディと続く。そしてメインの「高原黒牛」は繊細な赤みが持ち味で、炭火で外はしっかり、中はしっとりと焼き上げてある。青木シェフは新天地瀬戸田で自ら野菜やハーブを育て、自然と向き合うことで新たな料理の世界観を構築している。生口島はしまなみ海道を自転車で旅するサイクリストとレモンで名高いが、新たな魅力として「Azumi Setoda」を加えておきたい。


chef profile

青木 一誠
KAZUSHIGE AOKI

バール、トラットリア、リストランテと経験を積み、2013年に渡伊。ピエモンテ州トリノの星付きレストラン「リストランテ・ガルデニア」で先進的なコースと伝統的な郷土料理の双方を学ぶ。帰国後サローネグループへ入社、「サローネ2007」「サローネ トウキョウ」のシェフを歴任し2026年「Azumi Setoda」シェフに就任。


INFORMATION

広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田269[google MAP🔗]
Tel:0845-23-7911
営業時間:ディナー 17:30〜
定休日:火曜日・水曜日(レストランのみ定休、宿は無休)
公式WEB