Ristorante AKITA Minami Aoyama
リストランテ アキタ 南青山
イタリア郷土料理を更なる高みへと昇華させる










多くのシェフ達との出会いを有形無形のエネルギーとして料理に反映する
2024年南青山にオープンしたばかりの「リストランテ アキタ 南青山」は新店ながらも老舗料理店のような空気を醸し出している。それはおそらく秋田和則シェフの長い経験が生み出す懐の深さと確固たる信念ゆえなのだろう。若き秋田シェフのキャリアは80年代以降のイタリア料理史の縮図でもある。最初にイタリア料理の世界に飛び込んだのは「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」。70年代にはミシュラン2つ星に輝いたこともある「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」の日本店だ。当時は今と違って厳しさが美徳とされた時代で、厨房の空気は張り詰め、叱責の中に学びがあったという。当時から渡伊を夢見ていた秋田シェフは27歳でイタリアに渡り、ピエモンテ州の名店「アッレノテカ」ダヴィデ・パッルーダ・シェフの下で働き始めるとさらに5州のレストランを渡り歩いた後に帰国。齊藤実シェフの「イル・クワドロ」でスーシェフをつとめたあと山形県鶴岡市「アル・ケッチァーノ」奥田政行シェフの下で統括料理長をつとめ「ヤマガタ サンダンデロ」シェフを経て独立。オープンの場所として選んだのはかつて奥村忠士シェフの「アカーチェ」があった場所といえば懐かしがる人も多いことだろう。
「リストランテ・アキタ」では現在昼1種類、夜4種類のコースのみ。ある日の夜のコースからいくつか紹介すると、まず最初に登場するのが6種類のアミューズ。「白茄子の冷製スープ」「うちわはぎのカルパッチョ」「塩水うに、鯵とホタテのタルタル」「毛蟹のクロケッテ」「バッカラ マンテカート」「弁慶飯」と一口サイズの中にさまざまな味や香り、食感が込められており続く料理への期待が高まる。
続く冷製「秋刀魚のインヴォルティーニ」は甘さを感じる秋刀魚に貝の出汁を効かせたフェンネルのピューレとほろ苦さを感じるすだちのジャム。海苔に撒かれた手巻き寿司のようなフィンガーフードは「うなぎの天火焼き」で、これはモストを煮詰めたモデナ伝統のサバを塗りながら焼いたイタリア風の蒲焼。花山椒、薄焼き卵、ヤングコーンが添えられており米型のパスタ、リゾーニを使用している。パスタは「ピアチェンツァ風トルテッリ」。数ある詰め物パスタの中でもサルデーニャのクルルジョーネスと双璧の美しさで、伝統料理に関してはアンタッチャブルという秋田シェフの姿勢が伝わってくる。もう一品手延べパスタは「ブラウンマッシュルームのピーチ」黒トリュフを合わせたキノコの香りが非常に濃厚なノルチャ風。さらにパスタがもう一品「燻製カジキのブラチョーレ」はズワイガニとプロヴォローネを詰めたカジキのインヴォルティーニで、付け合わせ的にトルテッリが添えられている。メインの「蝦夷鹿フィレのポワレ」にはラルドが添えられており脂と旨味をプラス。鹿もいいが、さまざまなキノコを使ったリゾットが素晴らしい。デザートの「パットーナ」これは栗の粉を使ったピアツェンツァの郷土菓子でローズマリーノのジェラートと合わせて食べるとトスカーナのネッチを思い出す。最後の小菓子の「ズブリソローナ」にいたるまであちこちにイタリアのトラディショナルが顔を出し、そうかと思えば秋田シェフらしいオリジナリティも加わった実に満足度の高いコースだった。
「多くのシェフたちの強烈な個性に触れたことで、自分の中の自由さも育まれた」と秋田シェフ。確かに80年代から90年代にかけて日本のイタリア料理の歴史を作ってきた名シェフ達との時間は秋田シェフにかけがえのない財産をもたらしたのだろうと想像する。また、イタリアで出会った職人や農家、漁師たちとの交流から「食材は商品ではない。生き物だということを彼らに教わった」ということを学び、料理に対する考え方が一変したという。「イタリアに郷土料理があるように、日本には現代のイタリア郷土料理があっていい」。そう語る秋田シェフは、今後さらに日本各地の風土や素材を取り入れた新しい郷土料理に挑戦したいという。イタリアで学んだものと日本で培ったものを組み合わせて未来へと繋ぐ、それが秋田シェフが「リストランテ アキタ 南青山」で取り組みたい壮大なるプロジェクトだ。
chef profile

秋田 和則
KAZUNORI AKITA
1972年生まれ。「サバティーニ・ディ・フィレンツェ渋谷店」にて研鑽を積み27歳で渡伊。ピエモンテ「アッレ・エノテカ」にて修行を始める。さらにイタリア5州を渡り歩いて郷土料理を学んだ後アルバにあるミシュラン三ツ星「ピアッツァ・ドゥオモ」に招待され進化した現代イタリア料理に触れる。帰国後に「アル・ケッチァーノ」統括料理長を務めたのち独立。2024年東京の南青山に「リストランテ アキタ ミナミアオヤマ」開店。
INFORMATION
東京都港区南青4-1-15 アルテカ・ベルテプラザB1F[google MAP🔗]
Tel:03-3405-5550
営業時間:ランチ 12:00~15:00(最終入店13:30) ディナー 18:00~22:00(最終入店20:00)
月、火休
➣ 公式WEB