SEMPRE
センプレ

木曽三川に囲まれた田園地帯に佇む一軒家レストラン

 

常に良くありたい、という願いが込められた店名は「センプレ」

一軒家のイタリア料理店「SEMPRE センプレ」は愛知県との県境に面した三重県桑名市長島町にある。このあたりは木曽三川と呼ばれる長良川、揖斐川、木曽川に囲まれた濃尾平野の一部で、長島町はその三川に囲まれた中洲のような土地。沖積平野の一部なので土地は肥沃で農業に適しており、有名な「桑名の焼き蛤」は1799年の洒落本「品川楊枝」にすでにその記述が見られるほど古くから知られていた。

それまで同じ桑名市内で「DA SEMPRE ダ センプレ」として営業していた名和シェフは、2023年に現在の場所に移転。周囲にはのどかな田園風景が広がっているのだが、その分アクセスはなかなか難易度が高い。ワインを飲まない人ならば車で向かい、東名阪自動車道長島ICで降りればすぐなのだが、最寄駅であるJR関西本線長島駅からは公共交通手段がない。タクシーを呼んでみたところ30分かかるといわれ、困って名和シェフに電話すると、営業前にも関わらず自らが車を運転して迎えにきてくれたのだ。「センプレ」へと向かう道すがら「このあたりは本当に不便なので、送迎サービス込みにしようかと考えてるんですよ」と笑うが、実はその不便さを楽しんでいるようにも見える。

「センプレ」とは「常に、ずっと」という意味のイタリア語で、常により良い料理やサービスを追求していきたいと言う想いが込められている。地元野菜を中心にしたプラントベースのコース料理は最初から最後まで、ディテールに至るまで手作りすることを旨としている。最初に登場するのは「センプレ」のコンセプトを色濃く反映した「雫」だ。これは野菜を余すところなく使い切ったスープで、カブや玉ねぎの甘みに加えほのかな苦味も感じる極上のコンソメ。一転して登場したのは小さな箱に忍ばせた「箱寿司」。これは長島町伝統の祝祭料理の再解釈。米のチップスに蓮根、自家製でんぶ、熟成卵黄、椎茸を使った一口サイズのアミューズだ。

「彩」もコース料理のハイライトのひとつだろう。これは自家菜園の野菜やエデイブルフラワー30〜40種類を使った料理で大根のムースやパウダー、赤ピーマンのパウダーが味のアクセント。桑名の蛤はパスタで登場した。手打ちのストラシナーティに菜の花と蛤という早春を感じさせる組み合わせ。「伊勢海老のラザニア」「美熊野牛のサーロイン」など伊勢湾と紀伊半島の美味を味わい尽くすこの日のコース料理は全部で14品。いずれも下準備や調理はもちろんのこと、みのり夫人と二人三脚のサービスに至るまで全てが実に丁寧。いつ訪れても窓の外に広がる田園風景を眺めつつ、素晴らしい時間が過ごせることは間違いない。


chef profile

名和 賢
MASARU NAWA

三重県桑名市出身。「ダ・センプレ」開業後、2023年「センプレ」と改名し現在の場所に移転。


INFORMATION

三重県桑名市長島町西川619-2[google MAP🔗]
Tel:0594-42-2500
営業時間:ランチ11:15〜、ディナー 18:30~
定休日:火曜、第1・3月曜日、金曜日のランチ
公式WEB