イタリア料理界においては「伝統か革新か」という料理人であるならば誰もが悩み、日々熟考する永遠の命題がある。その答えはというとどちらもイエスであり、ノーでもある。なぜなら伝統とは長い歴史が作り上げてきた無限の時間の堆積であり、そうした歴史から見れば今現在生きている我々の行動とはごく一瞬のできごと。かつてはトマトソースが既成概念を打ち破る革新的な料理であったように、イタリア料理という観点に立って見れば「革新」もやがては「伝統」の一部となっていくのではないだろうか。
革新的=イノベーティブ、なイタリア料理において最も才能を発揮するシェフ1人に贈られる2023年度「ベスト・イノベーティブ賞 by サンペレグリノ & アクアパンナ」は「TAKAYAMA」(京都)高山忠司シェフに決定。純白の空間の中心にあるオープンキッチンは高山劇場と呼ぶにふさわしく、なによりもそのライブ感とスピード感が素晴らしく、半円形のカウンター席に座ると目にも止まらぬ速さで驚きに満ちた料理が次から次へと運ばれてくるのだから。斬新であり現代的でありどこかユーモラス、しかし味はしっかりとイタリア料理。店内には常に外国からのゲストが多いのも、日本のイノベーティブ・イタリアンが海外から高く評価されている何よりの証拠だろう。授賞式は2024年1月29日(月)14時よりイタリア文化会館アニェッリホールにて開催する予定だ。
「タカヤマ」(京都府)高山忠司シェフ
広島県出身。22歳でイタリアに渡るも挫折して帰国。25歳でカナダへ。27歳で再度イタリアに渡り、イタリア各地で約6年間修業を積む。2018年に帰国。レストラン「TAKAYAMA」オーナーシェフ。