「Young Chef Award(ヤング・シェフ・アワード)」とは、最も優秀な40歳以下のシェフに贈られるアワードであり、2025年度は福井県越前市にある「tsukihi ツキヒ」長屋恭平シェフに決定した。1985年岐阜県に生まれた長屋シェフはイタリアや大阪、神戸での勤務経験を経て2024年1月福井の地に移住。ワイナリー「シックスエステート」のレストランを立ち上げるという壮大なプロジェクトに取り組み始める。1年かけてワイナリーでブドウの栽培や収穫、醸造、さらには福井の食材や食文化を学び、ワイナリーのコンセプトである越前テロワールを取り入れたメニューを完成させたのだ。「ツキヒ」という店名は松尾芭蕉が奥の細道で「月日は永遠の旅人である」と詠んだことに由来する。

「この地域は焼き物や漆、和紙、メガネ、包丁など伝統的に職人による手工芸が盛んなのです」と長屋シェフ。地形的に海と山が近いので水も軟水になり出汁が取りやすく、里山の食材と海の食材を交互に出すなど越前の生態系そのものを料理に取り入れている。神戸「エッレ」時代も長屋シェフが薪で調理した料理は驚きの連続だったが、「ツキヒ」でも使用する熱源は炭のオーブン、特注の薪窯、薪のかまどと調理本来の姿を追求し続けている。

これはイタリア料理自体の課題でもあるのだが、料理が高級になればなるほどフランス料理との境界線が曖昧になり、ゲストに伝わりにくいという永遠のジレンマがある。長屋シェフもまた、仕事しすぎるとフランス料理に近くなるし、日本ならではということでイタリアよりもさらに素材を第一義として前面に出しているという。見た目はシンプル、しかしその裏に隠された思考、仕込み、調理には他を圧倒する真摯な姿勢が見てとれる。

2023年「エッレ」シェフ当時、統一テーマ「パスタ未来形」で長屋シェフは「パスタは、そのものを例え1本でも食べただけでもそれが何のパスタなのか分かる事が大切だと考えます。それは、イタリアのエスプレッソのような抽出したものがパスタにも求められてると思います。それを日本人の感性で、利己的でなく素材を尊重し食べ手の方と分かち合えるようなパスタこそが未来形の一つの形だと考えます」と語ってくれたが、イタリア料理に対する取り組みはその当時となんら変わっていない。

「ツキヒ」長屋シェフには事務局より「Young Chef Award 2025」をお贈りし、その活躍を表彰するとともに今後の「ツキヒ」に大いに期待したい。受賞インタビュー動画は来春公開予定なのでこちらも楽しみにお待ちいただきたい。