RINASCIMENTO
リナシメント
30種類の前菜が織りなす極上のインサラータ
イタリア料理のルネッサンスを目指す隠れ家的レストラン
目黒にある「リナシメント」は看板のない静かな隠れ家のようなイタリア料理店だ。喧騒から離れた感性な通りに佇むその外観はスタイリッシュでモダンながら。しかし店内に一歩足を踏み入れると安らぐような温かみを感じる、そんなレストランを目指したとオーナーの三浦幸一氏はいう。
シェフの渡辺弥真斗氏は日本でのイタリア料理経験を積んだあとイタリアに渡り、トスカーナ州の「イルコロンバイオ」やイタリアが誇るグランメゾンの一軒である「アルノルフォ」、さらにヴェネツィアの名門5つ星ホテル「ホテルバウアー」でさらにその腕を磨いた。
現地で正統派イタリア料理を吸収した渡辺シェフは、いま「リナシメント」でその料理の才を発揮する。代表料理である「インサラティッシマ・リナシメント」は30種類もの一口サイズの前菜の盛り合わせで見目麗しいばかりでなく、さまざまな食材が詰め込まれたジュエリー・ボックスのような料理だ。インサラティッシマとは極上のサラダ=インサラータという意味だが、元気を出すという意味もある。料理がテーブルに運ばれてきた瞬間、思わずテンションも上がって元気になる、そんな願いが込められているのかもしれない。数十種類の野菜やマイクロハーブなどをサラダ仕立てにした料理は古くはミシェル・ブラスの名作「ガルグイユ」に始まり、エンリコ・クリッパら現代を代表するスターシェフが独自のサラダに挑んできたがこの「インサラティッシマ・リナシメント」もそんな系譜に連なる一皿となるかもしれない。
2023年度「パスタ未来形」で渡辺シェフが披露してくれたのは真紅のパスタ「秋香る 松茸 トリュフ取り合わせ ビーツソース」だった。衝撃的なビジュアルだがその味はマイルドかつ鮮烈でビーツ、アサリ、乾燥マッシュルームというトリプルスープで仕上げてあった。そしてビーツに見立てた加賀蓮根、牛蒡、インカの目覚めという大地の恵みの根菜に松茸のフリット、白トリュフ。官能的かつ洗練された深みのあるパスタは実に独創的で渡辺シェフならではのオリジナリティを強く感じる料理だった。
2024 ITALIAN WEEK 100 発酵の可能性メニュー
イタリアの代表的な食材であるポルチーニ茸を日本の”国菌”と呼ばれている麹菌、塩麹を用いて発酵させ、そのエキスだけを使用。ポルチーニは一度、凍結解凍させて細胞壁を壊し、発酵過程において微生物が浸透し易く加工。発酵によりアミノ酸と糖の生成が進み、旨味が増し、風味もより深く、一層複雑な味わいになっている。
トマトはジュースにした後、色素を濾過。透明な液体だけを抽出してポルチーニのエキスと合わせた。トマトの酸味が加わる事により、一層クリアな味わいに仕上げている。甘鯛は福井の漁師さんから直接入荷。鱗がサクッと揚がる5~600gの個体を選んでいる。また、船上で神経締めしている為、鮮度は良く、イノシン酸を増加させる為の長期熟成に耐えうる質となっている。
焼きリゾットは同じ若狭地域の発酵食品である”へしこ”を合わせ一層複雑な味わいに。バジルオイルで香り付けし、焦がし玉葱パウダーで香りや味わいに奥深さをもたらせています。
甘鯛の”イノシン酸”、トマトの”グルタミン酸”、発酵ポルチーニの”グアニル酸”。3つの成分の相乗効果により、何十倍もの旨味を感じられる、シンプルながらインパクトのある一皿。イタリア食材と日本の発酵文化という、自分にしか作れないオリジナルの発酵料理に仕上げました。
発酵の可能性に対するシェフの考え
流通網や保存方法などが発達していなかった時代、長期間の保存を考えた先人たちの知恵として発達した発酵技術。こう考えると最古の調理技法と言えるのではないかと思います。熱を加えずに、味や香り食感は勿論、栄養価までも変えていく事が出来る発酵は、調理技術的に考えても素晴らしく、持続可能な調理法の為、未来に残していかなければならない技法だと考えます。
国内外、発酵文化はありますが、特定の菌株または酵母による発酵が主流の海外(主にヨーロッパ)と違い、日本では伝統的な微生物による自然発酵が多く、麹による発酵が主流となっています。多湿な日本の気候風土と麹との相性が良い事が背景にあるようです。この”国菌”とも呼ばれる麹をどう料理に使い、どのようなアプローチをしていくかを考える事が重要だと思います。
また、各地域には独自の発酵を使った特産物などがあり、その地域の歴史や文化と深く結びついています。これらの食文化に工夫や改良を加えながらも、芯となるものは正しく引き継ぎ残していく。現代的な解釈で捉え、新たな味覚を創造し、未来に繋げていく。僕たち現代の料理人の使命だと思います。この伝統的な調理技術を、日本で生まれ育ち、イタリア料理に携わる自分らしく表現出来ればと思います。
chef profile
渡辺 弥真斗
YAMATO WATANABE
1989年生まれ。2010年調理専門学校を卒業後、「クッチーナ・イタリアーナ・ヤヤマ」(愛知県栄町)、2012年、フレンチレストラン「マジュール」(愛知県車町)での勤務を経て2015年、渡伊。トスカーナ州1ツ星「イルコロンバイオ」でスーシェフを務めた後、「アルノルフォ」(2ツ星)、ヴェネツィア「ホテルバウアー」(5ツ星)で研鑽を積み、2017年に帰国し、「リストランテ クロディーノ 神楽坂」(牛込神楽坂)、「アルマーニ リストランテ銀座」(銀座)を経て、「RINASCIMENTO」のシェフに就任。
INFORMATION
東京都目黒区下目黒2-23-2 1階[google MAP🔗]
Tel:03-6420-3623
E-mail:info@rinascimento.tokyo
営業時間:ランチ 12:00~15:00(L.O. 13:00)ディナー 18:00~23:00(L.O. 21:00)
定休日:日曜日・月曜日のランチ
※スマートカジュアル
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