Otto e Sette Oita
オット エ セッテ 大分

別府の温泉と大分県産食材を使った”温泉パスタ”


大分のテロワールを独自の調理法で表現

別府・鉄輪(かんなわ)温泉にある「オット エ セッテ 大分」は非常にユニークなイタリア料理店だ。日本一の湧出量を誇る別府には別府八湯と呼ばれる温泉地があるが、鉄輪温泉もその八湯のひとつ。昭和の風情が残るレトロな街並みには湯けむりが立ち上り、古くから湯治客が集まることで栄えた。「オット エ セッテ 大分」はそんな古い湯治宿を改装してレストランとし、蒸気や温泉を活用した「温泉キュイジーヌ」を提供しているのだ。

鉄輪温泉には昔から100度近い源泉を使った「地獄蒸し」という調理法があるのだが「オット エ セッテ 大分」では蒸気で野菜や魚を蒸し、温泉水でパスタを茹で、熱を利用してソーズを煮込み、野菜や果物を熟成、発酵させる。ミネラル豊富な温泉水で蒸した野菜は色も鮮やかで栄養価も高く、パスタ湯は昆布出汁のような味わいがあるという。メニューにはこうした「温泉キュイジーヌ」の看板料理がずらりと並ぶ。例えば「地獄蒸し鮑」「牛肉の地獄蒸し」「地獄蒸しフラン」「季節の魚の地獄蒸し」などなど。食材も大分県内最高の生産者と連携し、彼らを「アルティザン」と呼んでリスペクトしている。

梯哲哉シェフは料理の才はもちろんのこと、絵画もまた達人の域。最初に配られるメニューの主役は、手描きの大分県の地図。そこには地名や地形、食材が細かく描かれている。料理名もまたオリジナリティにあふれていて、梯シェフの料理哲学とユーモアが色濃く反映されている。例えば「猿から逃れた」という料理名を見て何を想像するだろうか?これは県南のアサヒガニと蒲江町のウニ、そして高崎山でアルゼンチン人が栽培するサパジートという野菜を使った料理。サパジートとはアルゼンチンではポピュラーなズッキーニに似た野菜なのだが、高崎山は野生の猿が多くて食べ頃になったサパジートが狙われることもしばしば。苦労しつつも猿から逃れて収穫できたサパジートへの感謝の念が込められているのだ。

「おらんだ」とはナスと苦瓜を味噌で炒めた大分の郷土料理なのだが、梯シェフはこれに塩麹で熟成させたおこぜの地獄蒸しを加えてオリジナル料理に。塩麹は焼くと焦げるので、蒸すことで柔らかく火が入る。そして梯シェフの独創的な料理「温泉パスタ 地獄蒸し」。パスタには温泉水を少量まとわせてから地獄蒸しに。 蒸すことで温度は103度まで上昇し、表面はつるんとしつつも中はアルデンテという独特の食感になる。トマトソースにはシイタケ、タマネギ、セロリなどの野菜と鱧、野菜、牛端肉を温泉水に加えて2時間地獄蒸しにしてブロードを加えてある。温泉を有効活用した、世界で例を見ないパスタである。

ちなみに店名の意味だが、オットとはイタリア語で数字の8を意味し、セッテとは7のこと。これは幕末まで大分県では8藩7領という小藩分立政策が行われていたことに由来する。イタリアも古代ローマ帝国分裂以来1500年間小国分立の時代が続いたことにより、各地域で独自の料理文化が育まれてきたという背景がある。こうした郷土の地域特性、文化をイタリア料理へと色濃く反映した「温泉キュイジーヌ」は、日本広しといえども「オット エ セッテ 大分」だけではないだろうか。一食必見、美食を堪能したあとは鉄輪温泉でくつろぐ、そんな旅はいかがだろう。


chef profile

梯 哲哉
TETSUYA KAKEHASHI

1972年生まれ。福岡県出身。福岡県のイタリア料理店を経て30歳で湯布院に移る。大分県産食材と別府の温泉を活用した調理に惚れ込み、2014年末に別府で「オット エ セッテ大分」をOPEN。現在、別府に1軒と大分市にレストランとバールを2軒運営。


INFORMATION

大分県別府市井田2組 [google MAP🔗]
Tel:097-766-4411
E-mail:ottoesette@gmail.com
営業時間:ランチ 12:00~15:00 ディナー 18:00~22:00
定休日:火曜日、水曜日
公式WEB