OSTERIA ENOTECA DA SASINO
オステリア エノテカ ダ・サスィーノ

弘前発、ローカルガストロノミーの先駆者


北から南まで、イタリア各地の厳選した郷土料理を

笹森通彰シェフと初めて会ったのは、彼がまだシチリアで働いていた2002年12月。豊饒なるカターニアの市場を共に歩いたこともある。翌年笹森シェフは日本に帰国し、故郷の弘前に「オステリア エノテカ ダ・サスィーノ」。修行先の「ドラーダ」で学んだという自給自足のスタイルに力を入れて野菜やハーブだけでなくチーズ、生ハムなどのサルーミ、そして現在はワイン作りにまで取り組み、その全てのジャンルで非常に高い評価を得ている。今にして思えば20年前にそのような自給自足のイタリア料理店を地方で始めたのは笹森シェフが先駆者であり、その後日本各地にローカルガストロノミーをテーマにするレストランが広まったのも彼の活動ゆえかもしれない。

弘前市の自宅裏にある畑を案内してもらい、自家製の野菜やハーブを口にすると、なんと清廉で味がはっきりしていることか。ルーコラ・セルヴァティカは苦くて荒々しく、ミントを一度口に含んだらその香りはしばらく消えない。自分で野菜やハーブを育てる、という行為は言うは安く行うは難し。笹森通彰シェフが自分で作る野菜やハーブは自分が欲しい味であり、畑で口にした途端それをどう料理に使うのかひらめくのだろう。「オステリア エノテカ ダ・サスィーノ」での食事はそうした笹森シェフ自らが作った野菜やハーブ、サラミ類、チーズ、ワイン、そして時には自ら釣ったマグロなどの魚介類が主役だ。素材ありきというのはイタリアにおける金科玉条だが、これほどまでにその哲学を謹厳実直に実行し、それも非常に高いレベルでアウトプットしているのが笹森シェフなのである。

「黒豚のカポコッロ 鴨胸肉 黒豚の皮付き生ハム あんぽ柿」は黒豚肩肉のカポコッロ、同じく黒豚腿肉の皮付き生ハム、鴨胸肉の塩漬けはいずれも自家製。小さいブッタータ・チーズという意味の「ブッラティーナ」は、ジャージー牛から作った自家製。これに自家菜園のミニトマトと酸味が際立つトマトのジュレとバジリコ。組み合わせはトラディショナルなカプレーゼだが、全ての素材が新鮮そのものなので満足度は非常に高い。青森産のホンマグロにはシチリア産のボッタルガをあわせる。以前はやはり自分でマグロのボッタルガを作っていたこともあったが、現在は産卵期のマグロは釣らないので、シチリア産を使用。

笹森シェフの代表的料理でもある「生イカとウニ 冷製スパゲッティ」。以前笹森通彰シェフはこんな話をしてくれたことがある。「現地の人は美味しい食材の美味しい食べ方をよく知っている。それをイタリア料理として美味しく食べてもらうのが難しい」と。青森におけるウニやイカ、マグロなどはその典型例だろうが、そこはイタリア料理のフィルターを通して極上の料理とするのが笹森シェフの真骨頂。海の底から今上がってきたような冷たいウニのパスタに、わずかなトマトの酸味が実によくあう。

「オステリア・ダ・サスィーノ」を訪れたら是非試したいのが自家製ワインの数々だ。岩木山を臨む畑で育てた葡萄で作るワインは弘前のテロワールを表現。弘前のリンゴから作るアポーワインは上質なシードルだし、シャルドネとマルヴァジアで作る「サスィーノ・ビアンコ」辛口でシャープ。「ネッビオーロ」は上質なピエモンテのワインを思わせる。「バルベラ」色は濃く、酸もいきいきとしていてフレッシュ感がある。野菜、チーズ、生ハム、ワインと、あらゆる食材を自分で作る自給自足レストランの理想系を目指す笹森シェフの世界観は「オステリア・ダ・サスィーノ」で体感したい。


chef profile

笹森 通彰
MICHIAKI SASAMORI

1973年青森県弘前市生まれ。仙台、東京のイタリア料理店で6年間勤めたのち2001年1月渡伊。ミシュラン二ツ星レストラン「ドラーダ」「アルノルフォ」など各地で2年半滞在し 2003年6月帰国。同年8月地元弘前に「オステリア エノテカ ダ・サスィーノ」をオープン。農水省料理人顕彰制度「料理マスターズシルバークラスはじめ受賞歴多数。


INFORMATION

青森県弘前市本町56-8[google MAP🔗]
Tel:0172-33-8299
営業時間:ディナー 18:00~21:00(L.O.)
定休日:日曜
公式WEB