長崎イタリアン
長崎県大村市「SENNA OBTUSIFORIA」
自ら育てた野菜を調理し、大村のテロワールを最大限に表現
オランダやポルトガル、中国など古くから海外との交易で栄えた文化都市長崎では、食の分野においてもテンプラやカステラに代表される外国の影響をうけた料理や菓子が多い。しかし近年ではそうした文化的バックグラウンドからの影響はもちろんのこと、豊かな自然=テロワールを生かした長崎ならではの長崎でしか食べられないレストランの活躍が顕著だ。いわば長崎ローカルガストロノミー最前線、長崎で注目の一軒をご紹介したい。
諫早駅からタクシーを走らせること約20分、途中藪が生い茂った細い道を通り、周囲に人家も見えなくなって「果たしてこの道で本当にいいのか?」と不安になり始めた頃、一軒家レストラン「セーナオブトシフォリア」に着いた。オーナーシェフ西野徳通氏が自ら設計したコンクリート打ちっ放しの2階建、周囲にある畑も西野シェフ自ら開墾したものだ。
建築を専攻した西野シェフは大村の地に自邸を建て、竹林を切り開いた畑で野菜を育てるようになると農業の深さに傾注してゆく。その野菜をゲストに食べてもらいたいという想いから九州のレストランで修行を始めたというユニークな経歴の持ち主だ。それだけに自ら育てた野菜や地元産の食材に対する情熱と知識は人一倍強く深い。季節の食材を極力シンプルな調理法で提供する「1日1組」のみというスタイルを貫いている。
(左上/自家栽培の熟成カボチャとムカゴのスープ。左下/前菜には近海ものの魚介が登場。手前のカゴカキダイには紫芋のサクサクした食感をあわせ、春菊とルコラのトッピング。奥はよく締まったブダイ。右/ワインはその日のおまかせで。この日はブルゴーニュのピノノワールを鴨にあわせた。)
(左上から時計回りに/猪のローストと4種の人参、3種の大根。尾長鴨に自家製マスタード。自ら育てた米を使ったムツの握り。柔らかい白身にクレソンとレモン胡椒がよくあう。とても軽くて上品なウナギのスフレ。出島というジャガイモで作ったスフレの中にもウナギが忍ばせてある。クエと高菜、カツオ菜。)
店名は周囲に自生している決明子(けつめいし)という薬草の学名だ。お任せコースで最初に出されるのがこの決明子のお茶。小村テロワールをまず感じて欲しいという無言のメッセージが強く込められている。自ら栽培した野菜や米、長崎産の魚やジビエといった豊かな食材が次々に三川内焼の器に盛られて登場する。窓の外に見えるのは陽光を反射してきらめく、大村湾の静かな水面。「セーナオブトシフォリア」での時間は実に静かに、緩やかに流れていく。
ITALIAN WEEK 100 関連情報
chef profile
西野 徳通 TOKUMICHI NISHINO
1979年生まれ。長崎県諫早市出身 建築士、DJ、百姓。2004年から大村市の未開拓地を開墾。2006年から単身この地に移り住み畑をスタート。「本当に美味いものはそこにしかない」をモットーに、その土地に根付いた植物から自分自身で種をとり、その種から育てた野菜で料理を組み立てることだけに価値を見い出す異色な料理屋「セーナ オブトシフォリア」を2018年にオープン。
INFORMATION
長崎県大村市日泊町398-4[google MAP🔗]
Tel:0957-51-1260
E-mail:sennaobtusifolia2018@gmail.com
営業時間:
11:30~22:00
定休日:不定休
➣ 公式WEB