il Pregio
イル プレージョ

伝統料理にクリエイティブなエッセンスをプラス


料理に尊敬=プレージョという哲学を込めて

北から南、シチリアやサルデーニァの島々まで、イタリア全土で3年に渡って研鑽を積んだ岩坪氏がオーナーシェフを務める「イル プレージョ」。イタリアの料理と文化を愛するが故、自らの感性からしか生まれないクリエイティブな料理を追求し続けるというシェフの真骨頂は、その少量多皿のコース料理の隅々に詰まっている。

2023年度パスタ未来形で岩坪シェフが披露してくれたのは「トウモロコシのカネロニ 鰻のコマッキオ風 ティムール」。このパスタの 発想の原点はイタリアにおける鰻の名産地であるエミリア=ロマーニャ州コマッキオの郷土料理「鰻の煮込み」。伝統的にはこの鰻料理にはとうもろこし粉を練ったポレンタを付け合わせるが、岩坪シェフはポレンタをカンネッローニにした。トウモロコシだけで作った薄いシートをパスタに見立て、中にはトマトで煮たウナギを詰め物にしてある。そして山椒の代わりに柑橘の香りを放つティムール(ネパール山椒)をアクセントにし、どこか東南アジアを思わせるエキゾチックな印象に仕上げてある。これはイタリア食文化の伝統と自分自身の経験から来る新しい発想を無理なく融合させたパスタの未来形だと岩坪シェフはいう。

パスタの食感は確かにトルティーヤのようなトウモロコシなのだが、なにせその形状が美しい。実際にパスタを切って整形し、ソースを詰めてから筒状に巻くその工程を間近に見ていたのだが、正確かつ素早いその手捌きにしばし見惚れていた。料理の盛り付けはもちろんのこと、おそらく岩坪シェフは外科医の道を選んでも大成したのではないかと思わせるようなその手捌きは圧巻のひとこと。

岩坪シェフのこうした一連の料理は一見シンプルな印象を与えながらも、その奥に駆使された様々な調理法や技術、そしてイタリア郷土料理への深い理解とリスペクトが垣間見える。ハーブやスパイスから醸し出される香りのハーモニー、意外性のある食材の組合せから生まれる食感や味のアクセントなど、違いがわかる大人にこそ楽しめるさりげないサプライズに溢れているのではないだろうか。代々木上原でしっかりと独自の歴史を刻み続ける実力店。


chef profile

岩坪 滋
YUTAKA IWATSUBO

1978年生まれ。辻調グループ エコール辻東京を卒業後、「アクアパッツァ」日高良実氏に師事。1998年~2003年まで在籍。 素材を生かしたイタリア料理を学ぶ。2003年~2006年までイタリア本国で修行。 「リストランテ フリポー」(ピエモンテ州)、「トッレ デル サラチーノ」(カンパーニァ州)、「ラ ペーカ」(ヴェネト州)等、 北から南・シチリア・サルデーニァの島々まで、イタリア全土に渡って研鑽を積む。帰国後、南青山「クッチーナ カッパス」料理長に就任。中目黒「リストランテ カシーナ・カナミッラ」料理長を経て、2012年10月5日、代々木上原「イル プレージョ」オーナーシェフとなる。「ミシュランガイド東京」2014年・2015年版で1ツ星を獲得。「ゴ・エ・ミヨ」2019年・2020年・2021年・2022年版に掲載。2024年1月麻布台ヒルズ内に2店舗目となる「プルサーレ」OPEN。


INFORMATION

東京都渋谷区上原1-17-7 フレニティハウス2F[google MAP🔗]
Tel:050-3503-1990
E-mail:info@ilpregio.jp
営業時間:ランチ12:00〜13:00(土日月のみ)ディナー18:00〜20:00
定休日:水曜日、第1・第3木曜日
※スマートカジュアル推奨
公式WEB