ristorante DONO
リストランテ ドーノ
地元京都で始まる「草片」中東俊文シェフの第二章
「エルバ・ダ・ナカヒガシ」から第二章「草片」への変遷
西麻布「草片」(旧店名「エルバ・ダ・ナカヒガシ」)で活躍していた中東俊文シェフは活動ベースを生まれ故郷の京都に移し、新たなるスタートを切った。中東シェフは京都東山にある摘草料理の名店「草喰(そうじき)なかひがし」の次男として生まれたが和食ではなくイタリア料理の道を志す。三人兄弟はいずれも料理の道を選んだというからまさに名門料理人一家出身のサラブレッドである。「エルバ・ダ・ナカヒガシ」「草片」時代から当時はまだ斬新だった野菜中心のイタリア料理を志向しており、その料理は実に美しく軽快。早春に野草中心の料理を食べた際には、トスカーナの野に咲き誇る早春の野草を描いたボッティチェッリの名画「春」を思い出したことは記憶にまだ新しい。
新店「ドーノ」は白川筋に面し、平安神宮の正面という素晴らしいロケーションにある。エレベーターで2階に上がり、店内に一歩足を踏み入れるとダイニングルームの窓からは朱色の大鳥居が目に飛び込んでくる。いかに京都とはいえ、これほどまで迫力ある空間もなかなかないだろう。中東シェフは店名にイタリア語で「分かち合う」という意味を持つ「ドーノ」と名付けたが、実は「神からの贈り物」という意味もあるのだが、このロケーションではその言葉の意味がよくリアルに伝わってくるのだ。
「ドーノ」の料理もやはり中東シェフが京都東山の畑で育てた野菜を使った野菜中心のコースだ。春の息吹を感じる「グリーンピースとそら豆のタルトレット」にはペコリーノのスプーマが添えてあり、これもまた中部イタリアの春を思い出す。「ヤングコーン」はスープというよりピューレ状で、焼きとうもろこし味のジェラート、とうもろこしのひげは子供の頃茹でたてをむいたときの香りだった。京都の農家が育てているアーティチョークには剣先烏賊をあわせレモンとオイルでイタリアの味付け。丸ごと焼いた賀茂茄子は中東シェフが自ら切り分け、大好きだというトスカーナのオリーブオイルをたっぷりかける。いずれの料理も素材を最優先にする、中東シェフのその姿勢には非常に感銘を受けた。素材の味で忘れられないのはインカの目覚めで作ったニョッキだ。甘さが印象的なニョッキに発酵バターと甘口のゴルゴンゾーラをトッピング、バターとチーズのコンビネーションがたまらない。琵琶湖の鮎は、ヴィネガーとタマネギを使った北イタリアの調理法「カルピオーネ」がジェラートにして添えてあった。メインは美山で獲れた鹿腿肉で、上品だが肉質はしっかり、味噌のようなコクのあるソースに付け合わせの野菜も10種類以上添えられていた。最後の「山椒のパンナコッタ」もまた秀逸で、レアチーズケーキのようなねっとりとした食感で、新鮮な木の芽とイタドリのジャムが実に爽やか。
現在中東シェフは月1回ペースで東京に戻り、「ドーノ」と野菜作りに集中している。「草片」時代から続けていたゲストとともに畑や野で山菜をとるファーム・トゥ・テーブルをさらに一歩進めたワイルド・トゥ・テーブルのプロジェクトも推し進めており、今後は狩猟にも取り組みたいというから意欲的だ。自ら食材を探し、手にする。それは天からの恵み「ドーノ」でありそうした喜びを分かち合い、中東シェフの料理として共に分かち合うことは無上の喜びである。
2024 ITALIAN WEEK 100 発酵の可能性メニュー
麹を使った日本の発酵と、自家製のチーズによってできたイタリアの乳酸発酵を合わせて、ハイブリットな発酵料理を自慢の野菜と併せて作りました。バターナッツに塩のみを加え発酵を促し、柔らかくなった円形の部位に鹿で作った詰め物を詰め軽く蒸したもの雪化粧カボチャに、塩とハチミツ、麹を加えピュレ状にしたものを詰めたtortellini、麹を使うことにより皮ごとピュレにでき、香りがとても良い詰め物です。江戸東京野菜の内藤カボチャは薪で丸焦げになるまで焼いたものアクセントに自家製のフレッシュチーズ2週間発酵させたものを合わして、仕上げにカボチャのシードオイル、鹿のコンソメをかけています。京都大原の自家農園や近くの畑のカボチャ三種類のいろんな特性を発酵によって引き出し、酸味、甘み、うま味を引き出し、牛乳から作った自家製のチーズと薪焼のカボチャで引き締めます。発酵により引き出したうま味とほのかな酸味がカボチャの甘みと合わさってコースの中盤を盛り上げてくれる一品です。
発酵の可能性に対するシェフの考え
発酵大国日本に産まれて、チーズ大国のイタリアで料理を憶えました。日本では冬の食べ物の無い時期に食を繋ぐため発酵が進化し、それは日本を冷蔵庫がない時代でも、季節を跨いで年中あらゆるものを口に運べる食の大国にしました。イタリアでは塩蔵により、肉や乳製品を遠く離れた場所に届けることを可能にし、国が経済が発達しました。両国ともに200年以上前の技術を今も伝承して美味しいを食卓に届けていて、現代は料理人が世界中の発酵を研究して、国境を跨いで自分の料理に加えようとしています。そこからまた新しい料理が生まれて、200年後の世界に届けていけたら、すごくロマンがあることだなと思います。私のレストランでも発酵の力を借りて、常温で保存が可能になるものを積極的に取り入れ、一時期に多くとれてしまう野菜を保存し、通年料理に使っています。お客さんの中にも発酵に興味を示す方も出てきたので、もう一度昔の技術をとり入れ、温故知新の気持ちで家庭でも積極的に発酵を取り入れられたら、フードロスの取り組みにも繋げられるなと思います。
chef profile
中東 俊文
TOSHIFUMI NAKAHIGASHI
1982年京都で生まれ育つ。18歳で単身イタリアに渡り、トスカーナの 「リストランテ・アルノルフォ」(ミシュラン2ツ星)に就職、メイン料理を担当。 その後、イタリアの淡水魚や山菜を使った料理に興味を持ち、ガルダ湖畔にある「ヴィッラ・フィオルダリーゾ」(ミシュラン1ツ星)やパリの「レストラン・アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」(ミシュラン3ツ星)で研鑽を積み。 帰国してから、京都一乗寺の「Prinz」の料理長を経て、2010年より「サン・レジスOSAKA」の立ち上げシェフとして招聘。 2016年東京、西麻布にて「エルバ・ダ・ナカヒガシ」をオープン、ヨーロ ッパでの6年間や関西で培った経験を存分にいかし独創的かつ色彩豊かな料理を提供し続け、2021年2月22日「エルバ・ダ・ナカヒガシ」を「草片cusavilla」と改め、よりお野菜にフィーチャーしたレストランで多くのお客様に季節と健康を届けている。2024年4月故郷の京都に自身二軒目となる「ドーノ」をOPEN。
INFORMATION
京都府京都市左京区岡崎円勝寺町62 2F[google MAP🔗]
Tel:050-1808-3110
営業時間:ディナー 17:00〜20:00
定休日:日曜日、週一回不定休
➣ 公式WEB