草片cusavilla
クサビラ

草を食むイタリア料理の最新進化系


「エルバ・ダ・ナカヒガシ」から第二章「草片」への変遷

かつて「エルバ・ダ・ナカヒガシ」という店名で、野菜や山菜を中心としたオリジナリティあふれる料理を出していた中東俊文シェフは2021年2月より「草」を店名に加えた「草片 クサビラ」と改名した。「草片 クサビラ」とは古来中国語で野菜を意味する一方、Villa=ビラとはイタリア語で館を意味する。つまりは草の館、と店名に料理コンセプトをより明確に打ち出した。中東シェフは京都東山にある摘草料理の名店「草喰(そうじき)なかひがし」の次男として生を受けたが和食ではなくイタリア料理の道を志し、18歳で単身イタリアに渡る。そんなイタリア修行時代にともに働いたのが、北イタリアのガルダ湖畔にある「リド・オッタンタクアットロ」のリッカルド・カマニーニ氏だ。現代イタリアのトップシェフの一人として非常に評価が高いカマニーニ氏のレストランを訪れた時、これが日本で一番好きなレストランだ、といって見せてくれた豪華本の表紙には「京都なかひがし」と書いてあったことは昨日のようによく覚えている。

中東シェフは「草喰なかひがし」のDNAを受け継ぎ「エルバ・ダ・ナカヒガシ」を経て「草片」で山菜や野草など、季節の食材をより重視したイタリア料理へと昇華させた。日本は四季に富み、季節ごとの食材に恵まれているが実は世界的に見ればそうした国はごくわずか。中東シェフは日本の「旬」を四季ではなくさらに細分化した24節気72候に則り、日々の料理を提案する。

また、中東シェフは自ら土をいじって畑を管理し、野菜やハーブを育てる。土と向き合ううちに環境やフードロスに対する考えが深まっていったそうだ。2023年度パスタ未来形「セコガニと菊芋のカプンティ」は、地球を丸ごと食べる、が料理のコンセプト。山の食材である菊芋は自らが畑で育てたもの。これに海の食材セコガニ(ズワイガニの雌)を合わせ、パスタは全粒粉を使った手打ち「カプンティ」で小麦の余すところなく味わえる一皿に仕上げた。

温暖化を中心とした20世紀の環境に対する人類の負債を、これからの21世紀、22世紀で取り返せるよう、無駄なく全てを食べつくすという価値観で料理に取り組みたいと中東シェフはいう。その時期、その瞬間にしか出会えない食材や季節感を尊び、未来を見据えた一期一会のイタリア料理。「草片」のカウンター席に座り、そうした料理の数々を味わいたい。

「ヨーグルトとビーツのスープ」

鹿児島にいる頃、母は毎朝ヨーグルトを食べていました。その譲り受けたヨーグルトを今は東京で私が毎日食べています。瓶に牛乳を入れ、このヨーグルトを1スプーン加えると、次の日にはヨーグルトになっています。いつからか受け継がれているこのヨーグルト菌は、私たちの健康を保たせてくれています。 スープはいたってシンプルで、塩を加えた自家畑のビーツを発酵させスープを作成。鹿肉は肋骨部位の肉を丁寧にこそげ落としゼラチン質な部分が残るように丁寧に処理し、ヨーグルトとハーブ、黒胡椒でマリネして柔らかくコンフィにした後、備長炭の強火で一気に火入れしています。 スープは、発酵したビーツの甘さと酸味、ヨーグルトの乳酸の酸味、そしてマリネした鹿肉の旨味とスパイシーさが絶妙に調和し、食べる人を楽しませる心温まる一品となりました。赤い色合いが美しく、見た目にも食欲をそそります。 自分たちで育てたビーツ、守り続ける菌たちでできる唯一無二のスープができました。

私たちのお店のコンセプトは「無駄を出さない」という理念のもと、持続可能な食文化を提案しています。私たちは、環境に優しく、食材の本来の魅力を最大限に引き出すことに努めています。発酵の力を活用した料理は、季節や地域ごとの素材によって異なる表情を見せ、毎回新しい発見に満ちています。 食材の余分な部分を無駄にせず、使い切ることで、持続可能な生活スタイルを実現します。例えば、余った野菜の皮や茎を活用し、発酵させることで風味豊かな調味料やスープを作り出しています。このように、食材を丸ごと使うことで、経済的にも環境的にもメリットがあります。 さらに、発酵食品は保存性にも優れています。食材を発酵させることで保存期間が延び、食品ロスを減らす手助けにもなります。私たちのお店では、手軽に作れる発酵料理のレシピを提供し、家庭でも取り入れられるようサポートします。料理の仕方が簡単であるため、誰でも挑戦しやすく、発酵の魅力を広めることができます。 私たちの取り組みは、地球に優しいだけでなく、身体にも良い影響を与えます。発酵食品は腸内環境を整え、免疫力を高める効果があるとされています。お客様の健康を考えたメニューを通じて、心と体のバランスをサポートします。 無駄を出さず、地球に優しい食文化を実現する私たちのお店は、発酵の力によって無限の可能性を秘めています。持続可能な未来を目指し、美味しい料理を通じてお客様に幸せを届けていきます。


chef profile

帖地 華菜恵
KANAE CHOCHI

2024年3月「草片cusavilla」chefに就任。2021年「草片 cusavilla」の素材の味を最大限まで探求する料理に感銘を受け上京、1からイタリアンを覚えるため中東シェフのもと基礎から学ぶ。食材のキャラクターを最大限に引き出すため、今も産地に足を運んで生産者たちから学び、自然の景色を料理として表現する。


INFORMATION

東京都港区西麻布4-4-16-B1[google MAP🔗]
Tel:03-5467-0560
E-mail:info@cusavilla.com
営業時間:ランチ 金曜日、土曜日 12:00~ ディナー 月曜日~土曜日 17:00~(L.O. 20:30)
定休日:日曜日
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