ITALIAN WEEK 100のメインコンセプトのひとつに「地方におけるイタリア料理の再評価」がある。これは日本全国津々浦々、これほどまでに多くのイタリア料理店が独自の発展を遂げ、進化を続けている国は本国イタリア以外に日本しかないからだ。それは「旬=四季の素材の尊重」という料理哲学が両国の根底に流れているからであり、だからこそ日本という国にこれほどまでに深くイタリア料理は根付いたのである。
「ベストローカル賞」はそうした地方のイタリア料理店の中でも特に地元の文化や風土、歴史、料理、食材を尊重し、フードツーリズムの観点からも地元に大いに貢献するレストランに贈られる。2023年度の受賞店は「灯りの食邸 KOKAJIYA」(新潟県)だ。
岩室温泉出身の熊倉誠之助シェフは、沖縄での学生時代を経て生まれ故郷に戻ると料理人に転身。ケータリングなどで活躍していたところ使われなくなった築150年の古民家再生のプロジェクトに取り組み、イタリア料理店「灯りの食邸 KOKAJIYA」をオープンした。「灯りの食邸」という店名には一度失われてしまった灯りの再生への願いが込められている。
イタリアでの修行経験はないという熊倉氏だが、それゆえ既成概念にとらわれない大胆かつリベラルな料理が最大の魅力である。また「灯りの食邸 KOKAJIYA」だけでなく焼き鳥店やオーベルジュなど古民家再生プロジェクトに精力的に取り組み、亡くなった人々の遺品整理として食器類を中心にリーズナブルな価格で販売するなど、その活動は地域全体を大いに活性化している。ローカルガストロノミーという観点において大いに活躍する熊倉誠之助シェフと「灯りの食邸 KOKAJIYA」にはITALIAN WEEK100より「ベストローカル賞」をお贈りする。授賞式は2024年1月29日(月)14時よりイタリア文化会館アニェッリホールにて開催する予定だ。
「灯りの食邸 KOKAJIYA」(新潟県)熊倉誠之助シェフ
沖縄にてバーテンダーとしてキャリアをスタートし、日本バーテンダー協会主催のカクテルコンペティションにて数々入賞。独学で料理を学び新潟へ帰省。 ケータリングシェフを経て、2013年、築150年の古民家を利用し「灯りの食邸 KOKAJIYA」を開業。近年では隣接する空き家を利活用し、焼鳥店「岩室 とり蔦」や一棟貸切りの宿「岩室久元」を開業するなど、温泉街の活性化に貢献している。 発酵や乾物など、土地の食文化を取り入れながら、狩猟シーズンには自ら獲ったカモやキジなどをジビエとして提供している。 ミシュランガイド新潟2020特別版、ゴ・エ・ミヨ2023掲載。