Nihon no Italia Ryori Ten sai
日本のイタリア料理店 サイ
シチリア料理をベースに三河湾の恵みを活かす独自の感性













シチリア最高峰レストランで学んだシェフによる″日本のイタリア料理”
南イタリアのシチリア島はアラブ、ノルマン、スペインなどさまざまな民族や文化が足跡を残してきた地中海文明の中心地で、今も各民族の影響を受けた伝統料理が残る。そのシチリア最高峰のレストランが「リストランテ・ドゥオモ」で、オーナーシェフ、チッチョ・スルターノのもとで学んだ加藤了裕氏は2020年に生まれ故郷である名古屋に「日本のイタリア料理店 sai」をOPENした。加藤シェフは知多の野菜や三河湾の魚介類、渥美半島の肉といった食材から、日本の四季を感じられるような独自のフィルターを通したイタリア料理を日々提供している。
海が好きだという加藤シェフは珊瑚をレストランのシンボルにしているが、最初のアミューズにも珊瑚が登場する。テーブルに運ばれてきた小さな木箱をそっと開けると中に珊瑚を象ったグリッシーニと南シチリアのストリートフードである、一口サイズのスカッチャが入っているのだ。続いて一口サイズの「ワタリガニととうもろこし」のリゾット。「龍の瞳」という岐阜産の米を使いバターやチーズは不使用。カニの殻からとった出汁ととうもろこしを入れて炊き上げ、ワタリガニのほぐし身と内子、カニ味噌と合わせた炊き込ご飯を思わせる優しいリゾット。懐石料理の温石のように、まず胃を温めてもらいたいと加藤シェフ。「殻付きウニの冷製カッペッリーニ」も素晴らしい料理だった。これは三河湾のクリーミーなムラサキウニにわずかにマイクロネギを添えただけでシチリア、サリーナ島の冷やしたネロダーヴォラをあわせる。よく冷えた赤ワインが醸すシャープなタンニンはウニが持つヨード感によくあい、南シチリアで食べたウニのスパゲッティを思い出した。
「カマスのグリル」もまた忘れられない料理のひとつ。昆布締めしてからグリルしたカマスにはシークワーサーのソース、ルーコラのソルベ、そしてホワイトバルサミコのジュレ。異なる風味や酸味がカマスを一層引き立ててくれる。シンタマの炭火焼きのあとに出てきた「サマートリュフのジェラート」がまたすごかった。トリュフに牛乳、パルミジャーノやモッツァレッラを加えてジェラートにしてあり、香りと余韻が実に長い。トリュフと乳製品の良さを最大限に引き出してあり、料理のつなぎ的立ち位置ながらも主役にもなりうる逸品。ペッレグリーノのマルサラ2012もまた素晴らしい組み合わせだった。そして締めは「鮎と加賀太胡瓜のアーリオオーリオ」で、鮎の魚醤やうるかのソース、鮎の骨はブロードにしてあり、半身はソースに。肝から作ったうるかのソースには鮎の魚醤も入れてある。鮎のうるかや肝のソースはアンチョビとはまた一味違う発酵が生み出す奥深い旨味。日本ならではの発酵パスタは加藤シェフに真骨頂でもある。
縦横無尽、南船北馬、自由自在。和のエッセンスを加えた加藤シェフの料理はリベラルだが奥深く、何よりもシチリアへの憧憬に満ちているのがいい。1985年生まれというからまだ30代。前途有望、これからの10年がますます楽しみな料理人の一人だ。
chef profile

加藤 了裕
SATOHIRO KATO
1985年愛知県生まれ。名古屋のリストランテで修行を積みイタリアへ。トリノ名店「リストランテ バリック」やシチリアの2ツ星「リストランテ ドゥオーモ」にて修行。2020年に「日本のイタリア料理店 sai」を開き2021年「RED-35ブロンズエッグ」入賞。
INFORMATION
愛知県名古屋市中区千代田2-8-17グリーンハイツ鶴舞公園[google MAP🔗]
Tel:052-265-7117
E-mail:satohiro85@gmail.com
営業時間:ランチ 月・火/土・日 11:30~14:30 ※一斉スタート(11:30~11:45までにご入店ください)ディナー 月・火/金・土・日 18:00~22:30 ※18:00一斉スタート
定休日:水曜日、木曜日
➣ 公式WEB
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三河湾のアンコウを詰めたラビオリです!上には三河湾で上がるガス海老をレアで碧南美人というにんじんをピューレのおソース、知多のブランド小玉ねぎ知多ペコロスを岩塩焼きにし、緑色のソースは知多半島の無農薬のハーブたちをオイルに、茶色のソースはガス海老の殻と頭を使って作った濃いめのビスク、最後は南知多のの青レモンの香りと小さなルッコラを添えています。
地元の豊かな食材でこの土地でしか食べられない日本のイタリア料理をご堪能ください!
シェフが考えるパスタ未来形
私の考えるパスタ未来形は、その土地でしか味わうことのできないパスタ! イタリアに20州あり、その場所で食べられてきた違うパスタがある。 本番イタリアで修行を積んだトップシェフが、世界中にいる!私達にしか作れないその土地や風土、農産物、海産物、山の恵みを使った、その土地でしか作れないイタリア料理が私の考えるパスタ未来型である!
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とてもクラッシックな組み合わせ、豆と海老。新しいアプローチの仕方で日本とイタリアを繋げた。豆はレンズ豆、人類が利用してきた豆の中でも最古の部類に属する。日本ではほとんど栽培されていない。日本の多湿な気候風土と米麹を使いイタリア産のレンズ豆を味噌にし、茹でたレンズと合わせより深い味わいのソースに変えた。日本の大豆から作られる豆乳に、ローズマリーを入れ乳酸発酵により豆乳中のタンパク質を凝固させ作る、豆乳ヨーグルト。これをソースに変えアクセントにする。この二つをつなげたのは新鮮な甘海老。余す所なく全てを使った。レンズ豆味噌のソースを絡めた、パスタの上に置き、豆乳ヨーグルトを上からかけた。2種類の豆を違う発酵方法で一つの皿にまとめた。
発酵の可能性に対するシェフの考え
いつも実家に帰ると母特製のkonbucia(スコビーから作る紅茶キノコ)がソーダ割りで出てくる。冷蔵庫には玉ねぎ麹やニンニク麹、味噌やヨーグルト….私にとって発酵を教えてくれたのは母であった。私達のレストランもノンアルコールペアリングはkonbuciaで提案している。ワイン同様発酵から生まれる様々な香り、味を作り出せるからだ!発酵の可能性は未知数で面白い。作り手によって同じレシピでもアプローチの方法、環境により、独自の味が生まれる。私たち料理人が考えるべきことは食材の持つポテンシャルを活かしつつ、発酵の過程で生まれる”唯一無二”の味に変化させること。そして日々思考を重ね、レストランで提供していきたい。発酵の可能性とは作り手の可能性と同義である。作り手の創造力によって生み出される、その未知数の面白さこそ、発酵の可能性ではないだろうか。
2024年度 IW100 アワード
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“ああ、パスタが食べたい”
誰もが一度はそう思ったことがあるはずです。
それは、パスタという存在をすでに心の中で認識し、
記憶のどこかに“あの味”を刻んでいるからでしょう。
パスタの原材料は、小麦と水。
水は空から降りますが、小麦はそうはいきません。
土を耕し、種を蒔き、風や太陽の中で育ち、やがて収穫され、乾燥され、小麦となる。
そして、人の手によって粉となり、水と合わせられ、形を与えられて初めて、
「パスタ」という存在が生まれます。
その工程のすべてに、人と自然の対話があります。
私はその「始まり」を確かめるために、イタリア・マルケ州のマンチーニ・パスタ工房と小麦畑を訪ねました。黄金色の穂が風に揺れるその風景の中で、「パスタは工場で生まれるのではなく、畑から始まる」という言葉の意味を、全身で理解しました。
小麦を育てる農家の手、粉を確かめる職人の目、ブロンズダイスから押し出される瞬間の香り。その一つひとつに、命の循環と人の誇りを感じました。
では、料理人としての私はどう証明するのか。それは、私が生まれ育った日本・愛知での記憶と、南イタリア・シチリアでの修行の日々を重ね合わせ、一つの物語として皿の上で表現すること。
鰯と香味野菜、ポルチーニで出汁を引き、地元で採れるみかん、青ネギ、赤紫蘇を合わせました。パスタは“混ざり合うアイデンティティ”を象徴するパスタ・ミスタを選び、その形の多様さに、土地と文化の重なりを映しました。
私にとっての“パスタの存在証明”とは、海と大地、記憶と経験、文化と発酵がひとつに溶け合う瞬間を創り出すこと。

