Unito
ウニート

「カシーナ カナミッラ」から「ウニート」へ岡野シェフの再出発


ベネズエラ、日本、イタリアのDNAを料理に融合

岡野健介シェフがオーナーシェフを務める「カシーナ カナミッラ」が、今年の3月新たに店名を「ウニート」と改めリスタートした。同店はOPEN以来郷土料理をベースとした上質なイタリア料理と素晴らしい桜の眺めで一時代を築いてきた。2017年に岡野シェフが全オーナーより引き継いでオーナーシェフとなって以来、時間をかけて徐々に岡野カラーで料理やスタイルを変えてきたが、今回の店名変更がその総仕上げとなるわけだ。「ウニート」とはイタリア語で「つながり」を意味するが、これはベネズエラ生まれ、日本育ちでイタリア料理に従事する岡野シェフの多国籍性を表現するコンセプトである。昨年のITALIAN WEEK 100「パスタ未来形」ではその3ケ国のエッセンスを融合させた「三味一体/蛸/トルテッリ」を披露してくれたが、パスタ人気投票では多くの票を集め、ベストパスタ賞に輝いた「イル テアトリーノ ダル サローネ」山本鉄巳シェフの「パスタ・キャリフィカータ」と最後の最後まで最高得票を争っていたことは特筆に値する。

「私にとってのパスタの未来形とは未知への挑戦と伝統の継承です。日本、イタリア、南米の共通食材である蛸をベースに用い、フェイジョンプレットのトルテッリ、南米食材のトマティーヨ(国産のフレッシュ)のサルサヴェルデなどを合わせ「南米 × イタリアン」という自分自身でもまだ見ぬ未知への挑戦します」

これは岡野シェフの「パスタ未来形」に対するコメントだが、いまだかつて誰も試みたことがない日本とイタリア、そして南米の融合という高い階段をこれから登り続けることになる。しかしその3ケ国の料理文化とエッセンスは幼少時から岡野シェフの体と記憶に染み込んできたものであり、他に真似できる人は誰もいないだろう。今後あらたに登場するであろう次なる「三位一体」をはじめとした、岡野シェフの新しいイタリア料理に大いに期待したい。


chef profile

岡野 健介
KENSUKE OKANO

1981年ベネズエラ生まれ。高校生時代に料理人になることを決意。三軒茶屋「ペペロッソ」銀座「トラットリア・バッフォ」で修業した後渡伊。トリノ「ラ バリック」で4年半修業、セコンドシェフとなる。日本に帰国後、「カシーナ カナミッラ」のシェフに就任。2017年よりオーナーシェフとなる。2024年には店名も変更予定。


INFORMATION

東京都目黒区青葉台1-23-3 青葉台東和ビル2F[google MAP🔗]
Tel:03-3715-4040
営業時間:ランチ 平日 11:30~(L.O. 13:00)ランチ 土日祝日 12:00~(L.O. 13:00)ディナー 18:00~23:00(L.O. 20:00)
定休日:火曜日、月2回不定休
公式WEB


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リストランテ カシーナ カナミッラ
「三国一体/蛸/トルテッリ 」

日本、イタリア、南米の共通食材である蛸をベースに用い、ブラジルの黒いんげん豆、フェイジョンプレットのトルテッリ、南米食材のトマティーヨ(国産のフレッシュ)のサルサヴェルデなどを合わせた。

私にとってのパスタの未来形とは未知への挑戦と伝統の継承日本、イタリア、南米の共通食材である蛸をベースに用い、フェイジョンプレットのトルテッリ、南米食材のトマティーヨ(国産のフレッシュ)のサルサヴェルデなどを合わせた。「南米×イタリアン」という自分自身でもまだ見ぬ未知への挑戦、新しい基軸を創り上げることを目標に「南米×イタリアン」というコンセプトに伴い来年長年続いてきた屋号を改名する予定です。

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キノコのフジッリ・チンチョとアチョーテのオイル
ウニート(中目黒・岡野健介シェフ)

「ウニート」岡野健介シェフが考案したのは「キノコのフジッリ・ハーブチンチョとアチョーテのオイル」。これは長谷川マッシュルーム、とび色舞茸、柳松茸、ジロール茸、ビゴール豚のパンチェッタをベースにしたオイルベースのパスタ。南米のハーブ「チンチョ」と「メキシカンマリーゴールドオイル」で香り付けし、南米の植物「アチョーテ」のオイルで仕上げてある。ほろ苦くてヨモギを思わせる「チンチョ」、パッションフルーツや山椒、カモミールの香りを併せ持つ「メキシカンマリーゴールドオイル」、そしてややスモーキーなフレーバーの「アチョーテ」と通常イタリア料理でお目にかかることはない南米のエッセンスを加えるのは、ベネズエラ生まれの岡野シェフの真骨頂。フジッリはSOCの特色を活かし、あえて二度茹でして食感を保持してある。岡野シェフしか作り出せないでは日本、南米、イタリアという3ケ国のアイデンティティが融合=ウニートしたパスタだ。

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「アニョロッティ・ダル・プリン」

パスタは単なる料理ではなく、その土地の文化や人々の記憶を映し出す器だと私は考えています。ピエモンテ州トリノで過ごした修業時代、出会ったのが「アニョロッティ・ダル・プリン」でした。家庭の食卓でも親しまれる素朴な詰め物パスタですが、リストランテで提供する場合、シンプルだからこそ、ごまかしがきかず、作り手の哲学と技術がそのまま味に現れる一皿でした。帰国後、この料理を日本で再現するにはどうしたらよいのか。小麦粉や水、卵の質も違えば、気候や湿度も異なる。そこで私は、イタリアで学んだレシピをただなぞるのではなく、日本という土地に寄り添うように何度も作り直し、試行錯誤を重ねてきました。

生地は、「ムリーノ・マリーノ」の有機00番小麦粉と、卵黄のみを使用。極限まで薄くのばし、口の中に入れた瞬間フワッと溶けてなくなるような繊細な口当たりに仕立てています。リピエノには、牛・豚・うさぎ・サルシッチャといった肉に加え、野菜、ハーブ、米、チーズなど、合計20種類もの食材、調味料などを調和させました。ひと粒のアニョロッティの中に「ひとつの料理」としての奥行きを凝縮すること――それがこのパスタの核心です。

仕上げのソースは、トリノの市場で味わった“朝作りたてのバターの鮮烈な香り”を再現するため、毎朝手作りするフレッシュバターを使用。そして24ヶ月熟成のパルミジャーノを削りかけ、深みと華やかさを添えています。生地に包まれるのは、土地の恵みであり、料理人の記憶であり、文化の証そのものです。この「アニョロッティ・ダル・プリン」は、イタリアでの学びと日本での探求、その両方を包み込んだ、私にとっての“パスタの存在証明”です。