Più falò
ピュウファロ
発酵+炭火焼きがキーワードのニューフェイス
代官山「ファロ」2号店として2024年1月虎ノ門ヒルズにOPEN
東京を代表する最新スポットの一つ、虎ノ門ヒルズ ヒルズタワー4階に代官山「ファロ」の2号店となる「ピュウファロ」が誕生した。「ピュウ」とはイタリア語で「プラス」を意味するが「ピュウファロ」とのコンセプトは極めて明快。「ファロ」の代名詞である炭火焼きに「発酵」というもうひとつのキーワードをプラスした発酵+炭火焼きイタリア料理なのだ。シェフを務めるのは「ファロ」樫村シェフの元で4年間過ごした江口拓哉氏。自ら炭火の前に立ち、肉を焼く。それも虎ノ門ヒルズという超近代的高層建築の中で、なのだから驚きだ。
「ピュウファロ」の代表的料理の筆頭が「ポルケッタ」だ。これは通常中部イタリアでストリートフードとして食べる豚の丸焼きで、味付けは塩とハーブのみ。シンプルながらもこれ以上美味しい豚の食べ方はない、とイタリア人なら誰もが認める郷愁の味だが、江口シェフはこれに日本ならではの発酵技術をプラスした。まず豚ひき肉、炊いた米、塩を混ぜて2週間発酵させ豚の熟鮓を作る。これをフェンネルとともに豚肉に塗り込んでから整形して炭火で焼くのだ。ポルケッタは皮めはパリッと、肉と脂はみずみずしくて柔らかいばかりでなく、発酵が生む独特の香りと旨味までもポルケッタに閉じ込めることに成功した。イタリアの伝統料理に日本の発酵技術を加えて、さらに一歩高い次元の料理にするその手法とコンセプトは、まさに2024年度の統一テーマ「発酵の可能性 Power of Fermentation」そのものだ。
豚熟鮓だけでなくさまざまな発酵調味料も全て自家製なのが「ピュウファロ」の意欲的なところ。現在江口シェフが仕込んでいるのはそら豆、白いんげん豆、ポルケッタなど8種類の自家製味噌や鹿の醤油、パンの醤油などで、これらが醸し出す酸味、甘味、旨味、塩味などを最適の状態で料理に活かす。「燻製サクラマスのティエピド」にはフレッシュヨーグルトのような岐阜の鮎なれクリーム。「馬肉の温製カルパッチョ」は馬肉に炭火で軽く火を入れ、パンから作った自家製のパン醤油を合わせる。これはやや甘口の九州醤油のような、若いバルサミコを思わせる独特の風味と甘味があり馬肉によくあう。
「キャベツの炭埋め焼き」はキャベツの間にアンチョビヨーグルトとパン味噌を塗って炭火焼きにしてあり、キャベツとアンチョビという黄金の組み合わせにパン味噌の旨味をさらにプラス。「イタリア風 風呂吹き大根」の餡は玉ねぎ麹とポルケッタ味噌なのだが、まるで熟成サルシッチャを使ったラグーのよう。クラシックな魚の紙包焼き「カルトッチョ」も「ピュウファロ」は一味違う。見た目はオースドックスなトマトとオリーブオイルの乳化ソースに見えるが、乳酸発酵させたキャベツとパンの醤油が使ってある。ポルケッタ味噌を使ったもう一つの秀逸な料理が「肉味噌を詰めたトルテッローニ」だ。トルテッローニとは通常はリコッタとイラクサやほうれん草などを詰めることが多い詰め物パスタだが、江口シェフは黒ニンニクと発酵キノコ、そしてポルケッタ味噌を詰め物にした。これもまた熟成サルシッチャのような、忘れ難い料理。伝統料理に現代の新しい技術と手間を加え、より高いレベルのイタリア料理にするその技術と努力、探究心は称賛に値する。
「発酵」とはいえ言うは易く行うは難しで、糠味噌同様毎日管理しなければいけない手間を考えればその困難さがわかるだろう。床下には熟成、発酵中の調味料が眠る樽や瓶がぎっしりと収められているのだが、これが虎ノ門ヒルズの中だということに改めて驚かされる。
2024 ITALIAN WEEK 100 発酵の可能性メニュー
豚のバラ肉をロール状に巻いて焼き上げる料理で言わばイタリア版の焼豚です。当店では自家製の発酵調味料”豚の熟鮓”とフェンネルを一緒に巻き込んでいます。添えている茶色いパウダーは”ポルケッタ味噌パウダー”です。まず豚の熟鮓はポルケッタを仕込む際に出る豚の端肉などを捨てずに溜めて保存しておき、炊いたお米と塩で2週間ほど発酵熟成させたものです。豚の熟鮓特有の香りと旨み、そして酸味が豚肉の味わいをより引き上げます。
そしてポルケッタ味噌パウダー。こちらも豚の熟鮓同様に余ったポルケッタの端肉を捨てずに溜めておき、米麹と塩で大体1年ほど熟成させ自家製の味噌を仕込みます。出来上がった味噌を更に乾燥させパウダー状にしたものがポルケッタ味噌パウダーです。麹由来のどこか日本人に馴染み深い旨味がありワインをグッと惹きつける味わいになっています。さらにポルケッタを炭火で焼き上げるので、脂身はこんがりクリスピーな仕上がりに。炭火焼きと発酵が上手く寄り添い奥深い味わいのひと皿になります。イタリア料理と炭火焼き、発酵調味料という当店のテーマを体現したピュウファロでしか味わえない特別な料理です。
発酵の可能性に対するシェフの考え
僕たちのレストランは生産者の方々の素晴らしい食材やワインのもと成り立っています。毎日真剣に仕事と向き合い届けてくださる食材はどれも美しくとても味わい深いものです。受け取った美味しい食材の魅力をお客さまに伝えることが、僕たちレストランに携わる人間の出来る重要な役割だと考えています。その中で僕たちの発酵の取り組みは、生産者の方からいただいた食材を無駄なく美味しくお客さまに届けたい、いただいた物を大切に扱いたい、そういった感謝の気持ちから自然に行なっているものです。しかし、レストランなのでしっかりと美味しい食事を提供しなければならない。その問題も発酵はクリアしてくれます。
発酵由来の体に馴染むような酸味や、芳醇な香り、長期間熟成による旨味。どの要素も料理の美味しさを格段に引き上げ、さらにはこの店でしか味わえないオリジナリティーを得ることが出来ます。自分たちの手で発酵調味料を作っているので工程や変化が分かり愛着が湧きますし、料理にも気持ちや説得力が増します。僕たちが扱っている自然派ワインとの親和性も非常に高いです。このように多くの良い影響を発酵の力は僕らのレストランに与えてくれます。これからは生産者の方々、レストラン、お客さまを繋ぐキーワードに発酵がなるのではないか、そんな可能性を感じます。
chef profile
江口 拓哉
TAKUYA EGUCHI
1988年東京生まれ。白金台「イル・グラッポロ・ダ・ミウラ」「イゾラ トラットリア」などを経て2019年より樫村仁尊シェフの「ファロ」へ。2024年1月「ピュウファロ」OPENに伴いシェフに就任。
INFORMATION
東京都港区虎ノ門2-6-1 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー4F[google MAP🔗]
Tel:03-6268-8300
E-mail:info@falo-daikanyama.com
営業時間:16:00~23:00(フード21:30LO、ドリンク22:00LO)、土曜 13:00~23:00(フード21:30LO、ドリンク22:00LO)、日・祝日 13:00~22:00(フード21:00LO、ドリンク21:30LO)
定休日:火曜
➣ 公式WEB