PIACERE / Shangri-La TOKYO ピャチェーレ / シャングリ・ラ 東京
古屋シェフの個性が光る「シャングリ・ラ 東京」のイタリアン









丸の内と東京駅を見下ろすナイトビュー、高層階のダイニング体験
東京駅に隣接する「シャングリ・ラ 東京」のメイン・ダイニング「ピャチェーレ」では、これまで歴代イタリア人シェフが厨房をリードしてきたが、約2年の休業期間を経た2024年10月に再開。新生「ピャチェーレ」第二章のスタートを切った。オーセンティックな空間と壮麗な夜景は東京屈指の存在感を誇り、再開を心待ちにしていたファンも多かったことと想像するが、新シェフに就任した古屋豊樹氏は長年フランス料理に従事したのち2015年に「ピャチェーレ」でイタリア人シェフと共に本格的にイタリア料理に取り組み始めた。
高級レストランになればなるほど、時にイタリア料理とフランス料理の境界線は曖昧になっていく。前菜、魚料理、肉料理、デザートと、イタリア料理がフランス料理的アプローチをすることもあればその逆もまたしかり。しかし、ことパスタに関しては、両者の違いは明確であると「ピャチェーレ」古屋シェフは語る。古屋シェフがイタリア料理の中でも特に惹かれる要素がパスタであり、パスタの味わいとは「最初の一口」が最も際立ちやすいと語る。二口目、三口目までは余韻が続くものの、それ以降は味が変化しにくいので、パスタにおいては常に味の「変化」を意識しているそうだ。
たとえば自家製のタリオリーニは食べ飽きることのない構成を意識しており、具材の重ね方やトッピングのバリエーションに気を配り、最後の一口まで驚きと楽しさが持続するよう工夫している。カニを使ったラザニアでは、生パスタ生地上にポロネギとカニの身を重ねて正方形に成形した後、クリームをかけてグラチネ。仕上げにゲストの目の前でカニのビスクソースをかけて完成させ、視覚、嗅覚、味覚すべてを楽しんでもらえるよう意識している。高級ホテル・レストランとしての責任もあるのでトマトソースのような伝統的な味でも一口目から十口目まで異なる印象を持ってもらえるように工夫し、味わいに複雑さや奥深さ、食感の変化を加えてひとつの「ストーリー」として成立するよう意識しているという。
白エビを使った前菜「富山県産白海老 渋谷 チーズスタンドのストラッチャテッラ 新潟県産こしひかり雪椿のリ・オレ レモンバーベナのジュレ 富山県産千華園の花」もまたそんな料理のひとつだ。上からレモンバーベナのジュレ、白エビ、ミルクで炊いた甘い米というレイヤーを薄く重ねた料理は繊細な見た目とは裏腹に一口味わうとさまざまな味と香りが広がる。最初に舌に感じる米の甘みに加え白エビの旨み、そしてレモンバーベナの香りレモンの酸味と余韻の長さも計算し尽くしてある。
「北海道村上農場 熟成じゃがいものニョッキ サルシッチャ セージ バター パルミジャーノ レッジャーノ 」は鶏のブロードとサルシッチャ、パルミジャーノ、セージというクラシックな組み合わせだがブロードの旨味にフォークが止まらなくなる。「63°C の鱈 大根と百合根 シャルドネクリーム 」は低温調理した淡白な鱈にシャルドネの酸味を効かせたソースのが際立つ。肉料理は「フランス ラカン産鳩のロースト ほうれん草 根セロリ パセリのクロケット レバーとタイムのソース 」これはフランス料理的アプローチの古屋シェフの真骨頂。胸肉には柔らかく火が入り、もも肉を使ったクロケッタとレバーソースも極上。フランス料理的思考だとイタリア料理は一段階も二段階も上昇することをあらためて証明した料理。
可能な限り国内の素材を選ぶようにしている古屋シェフは、出身地である神奈川県を中心に熊本や山形など、各地に足を運び、生産者との対話を通じて素材に向き合う。今後は「日本の食材のみを使ったフルコース」の実現を目指しており、フレンチが特定の食材や技法に強く根差しているのに対し、イタリアンはよりリベラルで柔軟性があり日本の素材とも相性がよく、パスタに使う小麦粉や卵、野菜にいたるまで、日本各地の素材を使って表現できる自由度が魅力だと語る。
「ピャチェーレ」とはイタリア語で「喜び」という意味だが、料理コンセプトは常にシェフ各自の自由な表現に委ねられている。歴代のシェフたちもそれぞれ独自のスタイルを持ち、イタリア料理という枠にとらわれず自由に表現してきたが、自分自身もその流れを引き継いでクラシックなイタリア料理にこだわることなく、フランス料理の経験を活かしながら自分らしいアプローチで料理を構成したいと語る。料理とは、素材・技術・構成に加え、何より「物語」を伝える手段である。料理にストーリーを持たせてゲストにとっての「喜び」となる体験を届けていきたい、それが新生「ピャチェーレ」を率いる古屋シェフの料理哲学だ。
chef profile

古屋 豊樹
TOYOKI FURUYA
1974年神奈川県横浜市生まれ。洋食屋を経営していた叔父に憧れ料理人を志す。新宿調理師専門学校にて調理の基礎を学んだ後、洋食レストランや、フランス料理店などで腕を磨き、有名ホテルのレストランの立ち上げ等に携わる。2010年ウェスティンホテル東京「ビクターズ」シェフに就任。2011年「ル・テタンジェ」国際料理賞コンクールの日本大会3位入賞。2015年「ピャチェーレ」スーシェフに就任。2024年10月同シェフに就任。
INFORMATION
東京都 千代田区 丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館 28階[google MAP🔗]
Tel:03- 6739-7898
E-mail:restaurantrsv.slty@shangri-la.com
営業時間:ディナー 17:30~23:00(22:30 L.O.)
日、月夜休
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