Ristorante L’ombra
リストランテ ロンブラ
六本木の名店が軽井沢に移転
信州食材を使った軽井沢イタリアンへの挑戦
かつて六本木で、イタリア全20州の料理とワインを出すレストランとして名高かった「ロンブラ」が2020年に軽井沢に移転。信州食材とイタリア郷土料理の組み合わせという新たなコンセプトを掲げて再スタートを切った。場所は中軽井沢駅の南方約2km。タクシーに乗ればすぐの距離にあり、周囲を緑に囲まれた素晴らしいロケーション。ダイニングルームに足を踏み入れれば大きなガラス窓越しに正面に見えるのは雄大な浅間山。シェフを務めるのは長身の牛尾裕氏。イタリア各地の名店で十年以上働いたのち帰国。奈良の「リストランテ イ・ルンガ」などでキャリアを重ねた後「ロンブラ」移転に伴い軽井沢に移住。自ら森に入って山菜や野草を取り、料理だけでなく絵画にもその才能を発揮するマルチな料理人だ。
長野産わさび生クリームソースに近隣の農家のトマトを使った「ガスパチョ」は酸味豊かで、夏の軽井沢にふさわしい涼を呼ぶ一皿。「信州サーモン」は炒り酒と青紫蘇のソースに穂紫蘇のジュレ、20日大根、エゴマ。それぞれの素材の新鮮さが際立つ。この日のパスタは蕎麦粉を使った自家製の「トロフィエ」で、信州の天然キノコと舞茸のスープ、そばの実の食感がアクセント。「山に行くとキノコもたくさんあるのですが、キノコはさすがにプロに任せています」と牛尾シェフ。なめこ、椎茸、白舞茸などさまざまなキノコにネピテッラ(イヌハッカ)を効かせたクリームスープは上品なポルチーニの出汁のよう。これにはメルローとカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネフランをブレンドした東御ワインチャペルの上質な「タテシナ ルージュ」をあわせた。
鮎、きゅうり、茗荷を使ったリゾットにはオリーブオイルのパウダー。リゾットというよりも鮎が主役の料理はほろ苦い野生のセルフィーユがたで酢を連想させる日本らしい夏の味。メインは上田市にある信州太郎ポークのローストでミントも加えたサルサヴェルデで食べる。肉ももちろんだが野菜のみずみずしさが素晴らしい。添えられたサラダはオクラ、トマト、ズッキーニ、サヤエンドウ、ルーコラ、レタス、水菜、カラシナ。軽井沢では野菜が主役級の働きを見せてくれるのだが、それは軽井沢に移住して以来野菜の素晴らしさに驚いたという牛尾シェフからのメッセージである。
2024 ITALIAN WEEK 100 発酵の可能性メニュー
熱々のごはんに漬物って、なんだかほっとしますよね。噛めば噛むほど広がる味わい。当たり前のようにお米や漬物が食べられる日本人は幸せ者かもしれません。その素朴で優しい一杯をシンプルにイタリア料理のリゾットに落とし込みました。リゾットに使用する米と日本酒、発酵食品の漬物「野沢菜漬け」は全て信州の地のものです。そのほか、かつおだし、国産発酵バターなどを加え、ご家庭でも作れる素朴で優しい一皿を目指しました。とくにこだわったのが、風味とコクのバランス。風味が強すぎると日本酒が苦手な方に難しい一皿になり、弱すぎると日本酒リゾットらしさが失われてしまいます。最高のバランスを求め、野沢菜漬けの本漬け(発酵させてあるもの)とかつおだしを煮出して、出汁を取り、米を炊き、日本酒、酒粕、発酵バターで仕上げることにしました。動物性のチーズを使わないかわりに、酒粕、発酵バターを加えることでコクを出し、日本酒の香りと酒粕の香りを引き立たせ、風味とコクのバランスを実現しています。皿の上で注ぐ野沢菜の浅漬けと煎り酒で作ったソースの爽やかな風味と鮮やかなグリーンが食欲をそそります。
発酵の可能性に対するシェフの考え
18歳で単身渡伊。11年に渡るイタリアでの修行中はもちろん、奈良「小粋料理 万惣」で働いた経験から、チーズ、ワイン、酒、醤油、味噌、漬物などの発酵食品は、私にとって料理をする上でかかせない食材です。信州に移住後は、味噌や日本酒はもとより、信州ならではの「しょうゆ豆」や「野沢菜漬」などの発酵食品との出会いが、料理の幅をぐんと広げてくれました。寒さが厳しい信州では、昔から発酵の文化がその土地土地に根付いた食文化として受け継がれ、毎日の食生活に欠かせないものとなっています。たとえば信州のご家庭で出していただいくお茶菓子に野沢菜。最初は驚いたものの、寒い季節になると恋しくなる味わいです。記憶が薄れるほどの夏の暑さ、不安定な世界情勢など、環境や時代が激動するなか、食文化の流れも確実に変わっていくでしょう。そのなかで私どもロンブラは、信州の発酵文化をのせて、楽しみながら静かに、軽やかに時を刻む店であり続けたいと考えています。浅間山の絶景を望む小さな一軒家で、みなさまのご来店を心よりお待ち申しあげております。
chef profile
牛尾 裕
YUTAKA USHIO
1979年奈良県奈良市生まれ。 料理人を志し、18歳でイタリア料理の世界に入る。現地イタリアの料理学校に入学し、料理の基礎を学び、修行スタート。リグーリア州、トスカーナ州のホテルやレストランで約11年間の修行を経て、2009年、日本に一時帰国。 活動の場をシドニーに移すため2011年再び海外へ。多国籍文化に触れることで視野を 広げたことはアイデンティティ形成に大きな影響を与えている。2013年再び帰国。大阪の「BVLGARI IL CAFE」、奈良の「リストランテ イ・ルンガ」を経て「カフェ イ・ルンガ」シェフ、「小粋料理 万惣」、京都の「ART MON ZEN KYOTO」レストランシェフを経て、2022年7月より軽井沢「ロンブラ」シェフ就任。現在に至る。
INFORMATION
長野県北佐久郡軽井沢町長倉957-63[google MAP🔗]
Tel:0267-31-5104
E-mail:info@lombra.tokyo
営業時間:ランチ 11:00~、12:30~ ディナー 16:30〜、19:30~
定休日:木曜日
※二部制
※6名様以上のご予約は事前にご相談ください
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