L’OCEANO
ロチェアノ
茅ヶ崎から届ける、海と大地のイタリア料理








生きるために食べる、人間としての本質を学んだマイナス15度でのイタリア料理体験
「サローネトウキョウ」でシェフとして活躍した高井登シェフが独立、2024年10月にオープンした新店が茅ヶ崎にある「ロチェアノ」だ。高井シェフは「アルポンテ」「アカーチェ」など1990年代の東京を代表する名店で料理人としてのキャリアをスタートさせる。30年前の東京には現在ほどはイタリア料理店も多くなく、イタリア料理店なのにピッツァがないというだけで当時衝撃を受けたという高井シェフは、20代半ばで本物のイタリア料理を体験するためにイタリアに渡る。1年滞在し、最も影響を受けたのがヴェネト州山間部にある「ドラーダ」だ。生ハムなどのサラミ類からバルサミコ、チーズ、ワインなども自分たちで作る自給自足のレストランで影響を受けた日本人料理人も多い。仕事の合間にキノコを採り、ハンターが撃った鹿や生きた子羊を解体することで命をいただくという行為のありがたさを学んだという。冬はマイナス15度となる環境で生命を維持するための保存食作りでは調理技術だけでなく「生きるために食べる」という料理の本質を学んだ。
「ロチェアノ」という店名はイタリアで「海」という意味であり、海の近くに住みたかったという高井シェフは「サローネトウキョウ」時代からすでに茅ヶ崎に暮らし、独立開業後も海の近くを新しいステージに選んだ。東京時代とは違い、生産者に近くなったことで料理のインスピレーションや視野が広がったとことを実感しているという。例えばこの野菜はおひたしがいい、天ぷらがおいしい、焼いてもいいというような、日常に生産者たちと交わす会話の中からできるだけそうした野菜が最もいいコンディションで提供できるよう調理法はメニュー構成を考えている。
そんな高井シェフの思考を最も色濃く反映しているのが季節の野菜をふんだんに使ったひとさらだ。神奈川近郊の農家から届く20種以上の野菜をグリルやフリット、あるいは生と様々な調理法で仕立て、ヨーグルトとクミンのソース、大葉オイル、オリーブパウダーを添えて提供する。それは季節の走りや旬、名残をゲストに伝えたいという高井シェフからのメッセージだ。コースの最初に登場する温かいスープは「まずは、体を温めて、五感を解きほぐしてほしい」という意味がありハマグリ、昆布、鶏、椎茸の旨味を重ねた出汁に、江の島産のタチウオを浮かべてある。横須賀・長井漁港のカワハギはトマトのゼリー、パンツァネッラ、苺のパウダー、そして藤沢の農家から届くさまざまなマイクロハーブと食用花。これも野菜の声を聞くという高井シェフの料理方針に基づいた料理だ。
「出汁を取った後の具材はまかないに回すのが一般的だが、こんなにおいしいなら料理にして出すこともできるはず」という高井シェフは魚介のあらからとった濃厚なスープにさまざまな野菜やトマトを加えて作ったトマトソースのパスタは、海の幸を凝縮させた濃厚かつ豊満な味わい。トンナレッリのような骨太なパスタがよくあう。この日のメインは藤沢産宮地豚のヒレ肉を使用したコトレッタで、セージと生ハムを挟んであげてあり、ローマの郷土料理であるサルティンボッカを思わせる仕立て。柔らかいヒレ肉に濃厚なチーズソースとフォン・ド・ヴォーの旨味が絡み、食べごたえはあるが後味は軽やかだ。
「ロチェアノ」のコースには通常パスタが2皿組み込まれているが、「パスタに関しては奇をてらわない。クラシックな組み合わせには理由があるからです」と高井シェフは語る。ソースとパスタの形状には意味があり、そのような伝統的な組み合わせには最大限の敬意を払うという。それは高井シェフがイタリアで学んだことであり、美食としてのイタリア料理ではなく、命を支えるイタリア料理を体感、実践してきたからこそ、たどり着いた思考なのだ。
chef profile

高井 登
NOBORU TAKAI
1977年東京生まれ。「アルポンテ」「アカーチェ」などを経て渡伊。ヴェネト州の名店「ドラーダ」はじめミラノ、リグーリア、シチリアなどで経験を積み帰国。グラナダグループを経てサローネグループへ。「サローネトウキョウ」でシェフを務めたあと独立。2024年10月「ロチェアノ」オープン。
INFORMATION
神奈川県茅ヶ崎市幸町24-11[google MAP🔗]
Tel:0467-95-0496
E-mail:loceano2024@gmail.com
営業時間:ランチ 12:00~14:30 ディナー 18:00~22:00
水休
➣ 公式WEB