Le Api Osteria
レ アピ オステリア
ミラノで活躍した有名シェフが日本に凱旋帰国
長年暮らしたミラノ伝統料理を再構築
イタリアやフランスなどで25年にわたって活躍した松本良英シェフ、通称ヒデが日本に戻ってきた。松本シェフが長年働いたのはミラノ郊外にある名店「D.O.」だ。同店シェフのダヴィデ・オルダーニ氏は現代イタリア料理の父と呼ばれる故グアルティエロ・マルケージに当時師事したシェフ「マルケジーニ=マルケージ・チルドレン」の一人。オルダーニ氏が信頼し、パートナーとして共に働いた松本シェフもそういった意味ではマルケージの孫、あるいは甥にあたる日本では数少ない「マルケジーニ」なのだ。
松本シェフは「D.O.」を離れた後ミラノ市内で独立「レ アピ オステリア」をオープン。2022年10月に西麻布に移転し「レ アピ オステリア」第二章をスタートさせた。料理人にとって料理とは、それまで歩んできた道や出自を語る履歴書のようなものだが、松本シェフの料理からはそのDNAが濃密に漂う。まず最初は「仔牛のトンナート ヒデスタイル」これは薄切り仔牛肉にツナ、ケイパー、マヨネーズのソースをあわせた北イタリア、ピエモンテの代表的料理だが、松本シェフは子牛肉を低温調理しグラッパ漬けのクランベリーと洋梨とあわせ仕上げに肉のソース、スーゴ・ディ・カルネがかけてある。山と海のコンビネーションである。
「牛タンのロースト」も素晴らしかった。これは厚切りの牛タンを中は柔らかく、外は香ばしくローストし、酸味の効いたサルサ・ヴェルデとトマト風味の野菜のマリネ。これも原点はシンプルなイタリア料理「牛タンのボッリート」なのだが松本シェフは気を衒うことなく、基本に忠実でありながらも高い次元で郷土料理を表現、提供してくれる。「ミラノっ子定番 サフランリゾットと分解された仔牛の煮込み(オッソブーコ)グレモラータソースとともに」もミラノに長く暮らした松本シェフならでは。伝統的パスタに関してはいかなるトップシェフもアンタッチャブル、なことが多いが松本シェフやはりミラノの伝統料理であり、マルケージが「黄金のリゾット」というシグネチャーディッシュで世界的にその名声を広めたリゾットに関しては同じ考えなのか。イタリア米をサフランで炊いたリゾットは仔牛の脛肉のグレモラータソースと骨髄というクラシックなスタイルだが、これまでに何万回と作ってきたのであろう、完成度の高さにしばしうなる。もうひとつのミラノを代表する料理「ミラノ風コトレッタ」は小ポーションでカリッとあげた、実に上品な料理。いずれも伝統料理がベースながらも調理法や食材の選択で軽く、上品に、しかしDNAや料理自体のスピリットは失わないという、松本シェフの伝統料理に対する気概と敬意の念が伺える。
松本シェフは料理感についてこう語ってくれた。「イタリアから新たに生まれるもの全ては古き良き古典的なものや伝統的なものの中から生まれる場合が多く、料理もまた同じです。新しい料理も想像を超えた料理も、大事なことはすべてイタリアの郷土料理から始まり、古典的な技術は見直されることで新しい料理が生まれると思います。イタリアの古典的な料理の中で生まれた『レ アピ オステリア』の素朴な食のオートクチュールを古典的な未来形パスタとして皆様にお召し上がりいただければと思っております。」
また松本シェフは、現代イタリア料理の父と呼ばれた故グアルティエロ・マルケージもダヴィデ・オルダーニも、イタリア料理とは食材の最低限の食のコンビネーションで納められるように、できるだけ食材に手を加えない技術を持つことが大切だといわれてきたという。言うは易く行うは難し。しかしそれでも松本シェフは、若いシェフたちにその精神を伝えていかなければならない。それこそがマルケージはじめイタリアの巨匠シェフたちが未来に伝えたいことなのだから。偉大なるマルケージの継承者である松本シェフはその精神を受け継ぎ、日々「レ アピ オステリア」の厨房に立ち続けている。
chef profile
松本 良英
YOSHIHIDE MATSUMOTO
1968年東京生まれ。パティシェの父に3歳から菓子作りを教わり、高校卒業後は都内のホテルを中心にフランス料理を学び24歳で渡仏。2年間の修行後に渡伊、ミラノでダヴィデ・オルダーニ氏と出会ったことをきっかけにイタリア料理に転向する。2003年オルダーニ氏の「D’O」のオープン時からシェフを務める。2016年ミラノで独立、初の自店となる「LE API OSTERIA」をオープン。2022年から西麻布で「レ アピ オステリア」として再オープン。
INFORMATION
東京都港区西麻布2-8-7 サングラータ西麻布Ⅱ 1F[google MAP🔗]
Tel:050-3091-6419
営業時間:ディナー 17:00~23:30(コースは21:30L.O)
定休日:日曜日、月曜日
➣ 公式WEB