JINBO MINAMI AOYAMA
ジンボ ミナミ アオヤマ

南青山の裏路地にあるスタイリッシュな空間


野菜的観点から味わう斬新かつ鮮烈なる神保料理

野菜料理中心のイタリア料理店「HATAKE AOYAMA」で、長らくシェフとして活躍した神保佳永氏が、オーナーシェフとして2022年南青山にオープンした一軒。従来から発揮していた野菜に対するリスペクトをさらに前進させた、ナチュラルかつヘルシーな料理が特徴だ。食材は、信頼を寄せる全国の生産者からダイレクトに届き、イタリア料理の枠を超えた和洋中さまざまな技術と発想を駆使して旬の食材に正対する。料理は昼夜共におまかせ1コースのみ。

中でも神保シェフの代名詞的存在として知られていた北イタリア・ピエモンテ州の郷土料理「バーニャカウダ」をさらに進化させた、新バージョンが味わえる。30種類もの旬の野菜を揚げ、焼き、蒸し、時には生のまま精巧なモザイクにように盛り付け、エスプーマ状にしたバーニャカウダ・ソースとともにいただく。さまざまな野菜が持つ味の奥深さを再発見すること必須。

その神保シェフが2023年度「パスタ未来形」で考案したのは「焦がし小麦粉のラヴィオリ ズワイ蟹と伝統ネギのリピエーノ UMAMIのブロード(旨味)」。プーリア州の伝統食材、焦がし小麦粉=グラノ・アルソは通常オレッキエッテなどのショートパスタにすることが多いが神保シェフはラヴィオリにし、詰め物にはネギの旨みを凝縮させズワイ蟹と合わせた。ソースは利尻昆布の旨味に発酵させた玉ねぎと魚介のアラを加え炊き上げたブロード。クリアな中にも旨味が凝縮され、グラノ・アルソのラヴィオリと合わさった時、更なる旨味と香ばしさが広がる。イタリアの伝統と日本の伝統を融合させた、100年先も忘れられないパスタだ。

「〝発酵”バーニャカウダの進化」
「大根のボッリート 発酵玉葱のコンソメ」
「酒粕とリコッタチーズを包んだラビオリ 八丁味噌に漬け込んだキノコと自家製パンチェッタ」

「〝発酵”バーニャカウダの進化」
わたしのバーニャカウダは常にいろいろマイナーチェンジしています。使用している野菜は糠漬けにしたにんじん、コリンキー、あかかぶ、熊本の長茄子やすましバターで炊いたカリフラワー、赤玉ねぎのピクルス、つるむらさき、おかひじき、ほうずき、千葉の生ピーナッツなど、糠漬け以外に生や焼いたり煮たり米油で揚げたりした野菜は全部で40種類使っています。バーニャカウダソースは、オリーブオイル都アンチョビに加えて、今回は発酵させて黒くなったニンニクを入れてあります。見た目も味噌っぽくなりますが、ニンニクの熟成感がすごいです。

「大根のボッリート」
この時期になると出てくる冬の大根を一度かつらむきにし、それをもう一度年輪状に巻いてからコンソメで煮ます。すうすることで大根の繊維を残したまま火を入れるので、味は染みているけれどしゃきしゃきした、煮崩れていない独特の食感になります。お出しする直前に今度は鶏や牛、香味野菜、長野の天然水でとった別のコンソメに発酵させた玉ねぎをくわえサイフォンであたためてから大根に注ぎます。発酵玉ねぎは香りが強いので最初から加えず、ハーブと一緒にサイフォンで温めて香りをうつすようにしています。トッピングは白味噌にトリュフとイタリアのアップルヴィネガーを加えたディップ。わたしは野菜の可能性をつきつめたいので、大根を主役にしたボッリートです。

「酒粕とリコッタチーズを包んだラビオリ 八丁味噌に漬け込んだキノコと自家製パンチェッタ」
ラヴィオリは普通の生地とほうれんそうを練り込んだ生地2種類で作ってあります。中身のリピエノには酒粕、リコッタ、ほうれんそう。それをセージバターで味付けし、スーゴディカルネ、発酵バター、自家製パンチェッタ、パルミジャーノレッジャーノ、そして八丁味噌で漬け込んだジロールでソースにしてあります。酒粕だけだと風味が強いのでリコッタとあわせるとちょうどいい感じになり、後味の余韻がとても長いパスタです。

農家の方とお付き合いし、実際に産地にも足を運ぶようになってもう19年になりますが、3年ほど経った頃に農家のみなさんが酒粕や味噌、糠などを使って野菜を保存、発酵させて料理にうまく取り入れているのを見てイタリア料理に取り入れてみたらどうだろうと思うようになりました。わたしは基本野菜が中心なのでどんな風に発酵させてどんな発酵調味料とあわせるか、日本の発酵をどうイタリア料理にぶつけてマリアージュさせようか、それを常に考えています。これから革新的な料理を作っていく中で日本の発酵をどう取り入れていくかというのはごく自然なこと。私の中では糠漬けならこう、粕漬けならこうというのができてきたので、今は発酵を取り入れようという感覚ではなく自然に入っている感覚です。料理に酒粕や麹を使うと、外国のお客様は「なんのチーズですか」とおたずねになることも多いので「いえこれは、日本の麹です」と説明するとみなさんとても驚かれます

発酵を料理に加えた時の結論は奥行き、旨味、風味が増すことです。全てゼロから作るので一定の発酵の度合いを保つのは大変ですけど、それとうまくつきあいながら料理してゆくのも大切です。例えばトマトも発酵が進むと酸味も出てくるし状態も変わるので、出た水分も捨てずに他の料理に使ったり酸の状態の変化は常に見ています。魚醤も自分で作ってみたいのですが、匂うので近所迷惑になりそうなのでいまは控えています。わたしの実家は茨城で代々漁師をしており、祖父は自家製の魚醤を作っていましたが、これがもうくさくてくさくて子供の頃は嫌でした。でも家で食べる料理は美味しかったですし、祖父も美味しそうに食べていました。田舎では発酵ものをたくさん食べてたんですね。わたしは魚醤といえば子供の頃を思い出しますが、そういう記憶や味を料理に表現するのがわたしのイタリア料理のスタイルなのです。


chef profile

神保 佳永
YOSHINAGA JINBO

料理人の父親の元、長男として生まれる。 東京辻エコールキュリネール国立フランス料理専門カレッジにて料理の基礎を学び料理人としてスタートする。父の意思によりフランス料理から学び都内フランス料理店に勤務後、1999年に渡仏・渡伊、各地方のミシュラン星付きレストランで約2年間のヨーロッパ修行を行う。帰国後2002年株式会社ひらまつに入社、2005年スターツホテル開発株式会社・ホテルエミオン東京ベイへ洋食副料理長に就任、その後総料理長に就任。2022年4月に「JINBO MINAMI AOYAMA」を立ち上げる。自身の食活動として日本全国の小学校等で食育シェフとして食育活動&授業を行い、教育の分野まで広げ子供達に食の環境と魅了を伝え教えている。


INFORMATION

東京都港区南青山4-11-13サンライトヒル青山1F [google MAP🔗]
Tel:03-6804-5955
E-mail:info@jinbo-ma.jp
営業時間:ランチ 11:30〜15:00(L.O.13:30)ディナー 17:30~22:00(L.O.20:00)
定休日:日曜日、月曜日、イレギュラー有り
※カジュアルフォーマル
公式WEB