FRUTTO
フルット

秋田の食材を駆使し日本酒もペアリング


食の国、秋田ならではの芳醇なる料理の数々

秋田駅からほど近い市内中心部、飲食店が並ぶ一角に「フルット」はある。酒どころ秋田だけに店先になまはげが飾られた居酒屋や郷土料理を出す店が多いのだが、「フルット」の店内に一歩足を踏み入れるとそんなイメージは一転する。テーブル間隔が広く取られたダイニングと劇場のようなオープンキッチンは都会のリストランテそのものであり、その主役は五井慎太郎シェフだ。1人オープンキッチンの中央に立ち、黙々と料理を作り続けるその姿からは限りない料理への愛情が迸るのを感じずにはいられないだろう。

料理が高級になればなるほど、イノベーティブになればなるほどイタリア料理とフランス料理の境界線はどこにあるのか?と問われることが多いが、その答えは極めて簡潔。パスタこそがイタリア料理の命題であり、真理である。「料理ジャンルの垣根がなくなってきている中でパスタを出せるのはイタリア料理店だけ。そして旬の食材をパスタで食べることができるのもイタリア料理店だけ」という五井シェフは常にパスタを3種類コースに組み込んでいる。パスタを通じて季節や地域特性を表現する、できるというのはおそらく世界でもイタリアと日本だけではないだろうか。五井シェフは「アラ ボッタルガ 冷製フェデリーニ」の冷製パスタで始め、秋田の清流を連想させる「鮎クレソン タヤリン」を経て「そら豆 自家製チーズ ラヴィオリ」で秋田の遅い春を体験させてくれる。一口味わえば、極薄のパスタ生地に五井シェフの情熱が込められているのを感じ取れるはずだ。

「錦牛ハツ 根曲り竹」も非常に秀逸で、秋田産黒毛和牛の新鮮なハツを温かいカルパッチョのような感覚で食べさせてくれる。サーロインやイチボもいいがこうしたイタリア料理でいうクイント・クアルト(牛を4分割にした5番目、つまりほうるもん=ホルモンの意味)にこそ五井シェフからのメッセージがこめられているように思える。

「前菜やメインに創作的な料理を出したとしても必ず1品はイタリアの伝統を感じられるような郷土料理料理を出したい、と五井シェフはいう。それがパスタであり、将来的にはよりシンプルに具なしとかになっていくかもしれないともいう。メニューは基本的に月替わりで、10皿ほどの料理は全て変更するというからこれもまた情熱の証。サービスを担当する五井夫人のペアリングも秀逸で「ノドグロ サザエ」にあわせて新政No.6を選ぶなど、秋田の日本酒が登場するのも楽しみ。


chef profile

五井 慎太郎
SHINTARO GOI

秋田市生まれ。少年時代よりサッカーを通じてイタリア文化に親しみ、中学生の時すでにイタリア料理人となることを決めていた。専門学校卒業後に東京「リストランテ ラ バリックトウキョウ」などで研鑽を積み、2018年地元の秋田市で「フルット」を開業。2025年夏に新店舗に移転予定。


INFORMATION

秋田県秋田市楢山登町3-5[google MAP🔗]
Tel:018-838-5815
E-mail:frutto.akita@gmail.com
営業時間:ランチ 11:30~14:00(ランチ営業は土、日、月曜日のみ)ディナー 18:00~22:00
定休日:水曜日、第2火曜日、その他不定休あり
公式WEB


▶︎2023 ITALIAN WEEK 100 パスタ未来形メニュー Read more ≫
フルット
「香茸と渡り蟹 キタッラ」

パスタ未来形というテーマで、イタリアに元々ある伝統料理の継承というのも考えましたが、円安や物価高の影響もあり、未来は増々地元の食材を使った料理が求められてくると思い、その土地だから出来る、贅沢な旬の食材を組み合わせたパスタ料理を考案致しました。

ジャンルの垣根がなくなりつつある今こそ、パスタ料理で自店のコンセプトやイタリア料理らしさを表現していきたいと考えています。シンプルながらも秋田という土地を感じていただけるようなパスタ料理を提案していきたいと思います。

▶︎2024 ITALIAN WEEK 100 発酵の可能性メニュー Read more ≫
「「マハタ 自家製魚醤 ストゥファート 発酵セリソース添え」

秋田の郷土料理 しょっつる鍋をヒントに考えました。発酵といっても沢山ありますが、元々秋田は発酵食品が盛んなので、せっかくこういう機会ですので秋田の食文化も発信できたらと思い、魚醤をテーマにしました。

自家製魚醤(本格的に作るのは間に合わず、自家製のアンチョビを作った際にでたエキスを自家製魚醤と呼び、使用しております)、と魚の骨からとった出汁、乾燥させた香茸を合わせたスープに、皮目をしっかり焼いたマハタと同じく焼目をつけた白菜をいれ軽く煮込んで仕上げました。旨味のあるスープに香ばしさも加わり美味しいですが、少し単調かとも思い、秋田の特産品であるセリを発酵させたソースを別添えにしてます。発酵したセリのシャープな酸味がアクセントになります。

独立するまで発酵料理というと少し近寄りがたいというか難しいものだと思ってました。ですが、厳しい冬があり、食材が乏しくなるので元々乾燥や塩漬け、ピクルスなどにしてましたし実家では味噌なども作っていたので全く意識してなかったけれど発酵料理が身近にあるものだと改めて気づきました。特に秋田は、発酵食品が盛んでどこの家庭でも漬物や味噌、甘酒など作っているほどです。秋田の食文化の発信もできればと思っているので今後もっと取り入れていけたらと思います。トレンドだから取り入れなくては、ではなく余った端材を使ったり、美味しさの期間を延ばしてあげるという感覚でやっていければフードロスの削減にも繋がっていくと思います。

▶︎2025 ITALIAN WEEK 100 パスタの存在証明メニュー Read more ≫
「あきたこまちの米粉で作ったパスタ がたべこのラグーと天然舞茸」

パスタ料理=イタリア料理と言っても良いのではないかと思います。
特に、当店があるような地方になれば尚、お客様もイタリアンといえばパスタかピザというイメージをお持ちの方が多いと思います。イタリア料理人として、パスタ料理を通して自分達の店の個性や特色を表現していきたいと常々考えており、基本的に今地元の食材でこれを食べてほしいという旬の食材はパスタ料理に充てることが多いです。地元のお客様はフレンチもイタリアンも一括りに洋食として見られることも多いので、当店では常にコースの中に3種はパスタ料理を入れるなどして、当店はイタリア料理店だぞ。というアピールと他店との差別化をするようにしています。

<料理説明>
秋田でも小麦栽培はありますが、やはり米 のイメージは強いかと思います。 歴史的に見ても、きりたんぽなどの郷土料理の起源も米が余るほどあったから出来た事だと思います。 あきたこまちの米粉を使いパスタ生地を作りピィチのような形状に延ばし、合わせたラグーは秋田県立大学の学生さんが資源循型で国産飼料100%の持続可能な畜産モデルを目指し育てている短角牛の新ブランド「がたべこ」を赤ワインと、天然のキノコを掃除した際に出た端っこを集めて乾燥させて、それで取った出し汁と一緒に煮込みました。
盛り付けの際にあえてパスタとソースを合わせずに、ソースをパスタにかけるスタイルとしたのは僕が初めて食べたパスタがミートソース スパゲッティで、パスタが好きになるきっかけになった為、このような仕上げとしました。