農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」は、日本の「食」や「食文化」の素晴らしさ、その奥深さと魅力に誇りとこだわりを持ちながら、地域に根差した取り組みを続ける料理人を讃える制度だ。2010年に創設され、今年で16回目を迎える。2025年11月17日、帝国ホテルにて第16回「料理マスターズ」受賞者の授与式が開催された。今年は、日本料理、イタリア料理、西洋料理、中国料理など各カテゴリーから、ゴールド賞2名、シルバー賞3名、ブロンズ賞5名の計10名が選ばれた。

ITALIAN WEEK 100参加シェフからは、坂本 健シェフ(京都・cenci)がシルバー賞に、梯 哲哉シェフ(大分・Otto e Sette 大分)がブロンズ賞に選出された。坂本シェフは、これまで4回にわたるブロンズ賞受賞から5年以上を継続して、日本国内外での積極的な情報発信や後進の育成などへの取り組みが評価され今回のシルバー賞受賞に至った。梯シェフにとっては、今回が初めてのブロンズ賞受賞となる。

坂本シェフは、社会福祉施設に通う障がい者の就労支援の一環として栽培された青唐辛子と柚子を合わせた「柚子唐辛子」を商品化し、自身が開業した地域生産者の製品を扱う小売店「マニーナ」で販売するなど、地域との連携を深めている。梯シェフは、大分県の別府・鉄輪(かんなわ)温泉の温泉熱を活用した「温泉パスタ」の提供や、大分県佐伯市の食文化を考える食事会を毎年開催するなど、地元食材の魅力を引き出す活動が評価された。

授与式では、農林水産大臣政務官の広瀬 建氏が登壇し、日本の食と農林水産業が世界に誇れる重要なコンテンツであると述べたうえで、海外からの日本食への関心の高まりに触れた。近年、食を目的とした訪日外国人が増加しており、2024年度の訪日外国人数は3,700万人、その飲食費は約1兆7,000億円に上ると推計されている。広瀬氏は、各地域で活躍する料理人の取り組みが国内外からの需要を後押しし、地方の活力向上にもつながることを期待していると語った。

日本全国の津々浦々に、地域の生産者や食文化を“一皿”に託して表現する料理人が増えている。料理技術やエンターテイメントとしての演出を超え、食を通じて地域社会に貢献し、次世代への文化継承を積極的に担う料理人たちの存在は、これからの日本の食文化にとって、ますます重要な役割を担っていくことだろう。