byebyeblues TOKYO
バイバイブルース トウキョウ

シチリアを代表する女性シェフ、パトリツィアが料理監修


伝説のシチリアの名店がついに日本初出店

2022年秋サローネグループの新店「バイバイブルース」が丸の内に誕生した。地中海に浮かぶシチリア島にある「バイバイブルース」本店を訪れたのはもう20年も前のことになるが、その当時からシチリアを代表するコンテンポラリー・シチリア料理の旗手として名高かった女性シェフ、パトリツィア・ディ・ベネデットはその後も料理フェアなどでしばしば来日。常にその傍に立ち続けたのがかつて「バイバイブルース」で修行したサローネグループ統括料理長樋口敬洋氏だったことはまだ記憶に新しい。

そんな師弟関係から生まれた今回のプロジェクトは樋口シェフの20年越しの願いでもあった「バイバイブルース」日本初出店となって結実した。パトリツィア・シェフは自らの足で日本の生産者の元を回り、日本の食材を使ったシチリア料理を提案。シチリア経験豊富な永島義国シェフがその右腕となってサポート、パトリツィア・シェフの哲学をいかんなく発揮することに成功している。

本店でも人気の「カジキのインヴォルティーニ 茄子のカポナータ添え」はシチリアを代表する郷土料理ふたつを組み合わせたシチリア料理好きにはたまらない一皿。「イカ墨を練り込んだカヴァテッリ 赤海老とやりいかのソースとウニの泡」は伝統的なシチリア料理を現代的な手法でライトかつさらに美味に仕上げたもの。「イタリアと時差のないリストランテ」というサローネグループのコンセプト通り、シチリアの名店の味が楽しめる。

永島シェフが2023年度「パスタ未来形」で考案したのが「2つの記憶 新潟県上越桑取アザミ 鮟鱇 トンナレッリ」だ。2つの記憶とは生まれ故郷である新潟と第二の故郷と呼べるシチリアのそれぞれの味の記憶のこと。初めてシチリアに行った時に食べた魚介とアーティチョークのパスタは、なにか懐かしい味がしたと永島シェフはいう。その後、新潟の知り合いから送られてきた食材の中にアザミの茎の塩漬けがあるのを見つけた時、シチリアの記憶と結びついた。新潟ではアーティチョークと同じキク科のアザミの茎を塩漬けにして食べる文化があり、永島シェフも子供の時に食べたそのほろ苦い味を覚えていたのだ。

このアザミの茎の塩漬けは新潟県上越市桑取の飯塚さんが山で収穫し、固い筋などを取り丁寧に下処理したあと塩漬けにしたもの。手間がかかるので最近は作る人もすくなくなっているというが、郷土に伝わる貴重な食文化をイタリア料理として残したいという永島シェフの思いがこめられている。ちなみに永島シェフは「サローネトウキョウ」シェフの時代に、やはり新潟の雪景色をテーマにした名作「白いティラミス」を考案したが、これも郷土愛溢れる素晴らしい一品だったこともつけくわえておきたい。

「天然酵母の薔薇のタルト 酒粕とゴルゴンゾーラのジェラート カカオハスクのソース」

イタリアには豊富な種類の発酵焼き菓子があり、「パネットーネ」「パンドーロ」やフォカッチャの原型「フォカッチャドルチェ(ベネトでは”フガッツァ”とも呼ばれます)」など様々なものがあります。その中でも1番印象に残ったロンバルディア州マントヴァで食べた「薔薇のタルト」をイメージして作りました。当店自家製の天然酵母を使う事で奥行きのある味わいにしっとりと焼きあげました。レモン、バニラの香りのするイタリアでは大人から子供までみんな大好きなお菓子です。チョコレートも酵母や乳酸菌など様々な微生物から作り上げられる発酵食材の一つで「カカオハスクのソース」を合わせております。

カカオハスクとはカカオ豆の外皮のことで、チョコレート作る際に食感が悪いので外されてしまい産業廃棄物となってしまいます。何度も試作して上手く煮出す事で、旨味と苦味のあるソースに仕立てました。またジェラートは、イタリアの発酵食品の代表とも言える「ゴルゴンゾーラ」と私の故郷新潟県妙高市「鮎政宗酒造の酒粕」を使用しております。ほのかな塩味のゴルゴンゾーラドルチェに、優しい甘みの酒粕とお米のペーストを合わせたジェラートです。酒粕は近年、家庭でも食べられなくなり産業廃棄物化しておりますが、まだまだ新しい使い道がある食材です。アクセントには乳酸発酵させたプラムとキャラメルアーモンドのジャムを添えました。

乳酸発酵による深みのある酸味とジャムにする事で塩味をやわらげ、キャラメルの苦味やアーモンドの油脂分の旨味を合わせたジャムに仕上げました。今回のテーマは発酵ですが、イタリアと日本の発酵技術を用いて発酵を感じさせないように仕立てましたが、発酵の力で「甘み」「塩味」「酸味」「苦味」「旨味」が感じられるイタリアのデザートに仕立てました。(提供は2024年11月18日~30日まで)

自分が生まれ育った新潟県上越市は冬に雪が深く、作物が収穫ができない時期が長いため、食料保存方法が各地に沢山ありました。その中のひとつが発酵食品でした。お米の産地なので日本酒、日本最古の岩の原ワイン たくさんの味噌屋、家族で山菜をとりに行き、塩蔵 日干しなど、今考えると沢山の発酵に触れていました。イタリア修行時に美味しいと感じた出来立てサラミ、生ハム、チーズ、ワイン、パンも発酵食品。おいしくて発酵食品なのも忘れる程でした。

フリウリベネツィアジューリアでの修行時代に食べた、「ムゼット ブロバーダ (フリウリコテキーノ カブをワインの搾りかすにつけて発酵させたものをラード、ローリエで煮たもの) 」を食べた時の驚きの味は今でも忘れられません。冬の寒い環境のなか、発酵食品を食べて育ったから美味しいと感じたのかもしれません。

寒い冬の中生きていくための発酵から、発酵することによりさらに食材を美味しく、味の深みや新しい香りに仕上げる発酵。日本の発酵技術、文化とイタリアの発酵食品を自分なりに考え、発酵食品を(日本料理と)感じさせないイタリア料理を作りたいと考えています。


chef profile

永島 義国
YOSHIKUNI EIJIMA

1975年新潟生まれ。19歳でイタリア料理の道に入り、29歳で渡伊。5年間でロンバルディア州、ヴェネト州、リグーリア州、エミリア・ロマーニャ州、トスカーナ州、シチリア州の星付きレストランなど計8店で修業する。帰国後、2014年よりサローネグループに入社。2015年横浜「サローネ2007」のシェフに就任。2018年日比谷「サローネ トウキョウ」シェフに就く。そして2022年丸の内「バイバイブルース トウキョウ」オープンにあたりシチリアの経験を生かすべくシェフに就任。


INFORMATION

東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルディングTOKIA 1階[google MAP🔗]
Tel:03-6812-2131
E-mail:info@byebyeblues.tokyo
営業時間:ランチ 12:00~(L.O.13:00) ディナー 18:00~(L.O.20:00)
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