Arva(AMAN TOKYO)
アルヴァ(アマン東京)

“収穫“を意味するアルヴァが贈る五感で旬を味わうイタリア料理


日本全国を飛び回り、理想の食材を追求する

東京の中心地、大手町にあるラグジュアリーホテル「アマン東京」のメインダイニング「アルヴァ」はヴェネツィアの5ツ星ホテルでエグゼクティブシェフを務めた平木正和氏が料理監修を務める。平木シェフはイタリアでの経験をもとに、その底流に流れているのはあくまでもイタリア伝統料理でありながらも、日本各地の食材を取り入れた独自の日本的コンテンポラリーイタリアンを提唱している。休日には自ら日本各地に出かけて生産者のもとへと足を運び、未知の食材や上質な素材を常に探求する求道者だ。素晴らしい景観と共に体験する、従来なかった新しい思考のイタリア料理は数多い東京のイタリア料理店の中でも稀有な存在である。

平木シェフは実はかなりタフな伝統料理主義者であり、「アルヴァ」エグゼクティシェフ就任の際も、当時の支配人に試食用に作ったのはシンプルの極致トマトのスパゲッティだったという。それは平木シェフが本当に美味しいと思い、胸を張って出したかった料理であり、その姿勢は今も変わらない。ラグジュアリーホテルのダイニングでトマトソースのスパゲッティ?と思われたこともあったそうだが、そうした声は行動と規範で賛同に変えてゆき、いまではアートディレクター的存在となって全ての料理メニューは平木シェフに一任されている。

平木シェフの代表料理のひとつ「短角牛のミートソース」は実にシンプルだが北十勝産短角牛の歯ごたえの良いモモ肉ととろけるバラ肉の2種類のみを使用。香味野菜、赤ワイン、トマトで煮込んだものだが他の肉類は使用していないのでボロニェーゼとは呼ばず、あえてミートソースと名付けた。「エゾジカのラグーのウンブリチェッリ」は、国産小麦粉「ゆめひかり」を使い一本一本手で伸ばした中部イタリアの代表的手打ちパスタであるウンブリチェッリに、エゾジカをラグーにしてあわせてある。このエゾジカは以前食べたときにはハツ、レバー、フィレと3種類の肉や内臓を異なる調理法で味わう手の込んだ料理だったが、その生命を残さず調理するという姿勢はより顕著になり、ラグーとなって再登場した。トッピングに内モモ肉を軽く炙ってにんにく、唐辛子、イタリアンパセリで和えたタリアータ仕立てをトッピングしてあり、2種類の異なる食感と味わいを楽しむ、ワンプレートディッシュ=ピアット・ウニコ的な意味合いの料理だ。

「茨城県産かすみ鴨胸肉のアッロースト 黒舞茸と無花果のカラメラート」もまた生産者の立場に立った平木シェフらしい料理。薬を一切使わずに育てた鴨の胸肉をにんにくとローズマリー、オリーブオイルでロースト、鴨のガラからとったジュをソースとして添えてあり、コントルノの黒舞茸も埼玉県産で自生に近いものを使用している。

2023年から平木シェフは「日本地区統括ウエスタンキュイジーヌディレクター」となり「アルヴァ」のみならず日本におけるアマングループの西洋料理全てを統括する立場となり、京都や伊勢志摩などを訪れる時間が以前よりさらに多くなったという。そして日本全国の生産者の元を単独で訪ねる活動も常に精力的に行っている。それは日本全国津々浦々の優れた食材とその生産者にスポットライトをあて、上質なイタリア料理に昇華させたいという一途な思いゆえ。日本のアマングループ全体と統括する立場になっても立場はあくまでも「一料理人」そうした平木シェフの人柄や哲学が料理からは滲み出てくるのだ。


chef profile

平木 正和
MASAKAZU HIRAKI

アマン東京「アルヴァ」のエグゼクティブシェフ平木正和は、イタリアで17年を過ごし、うち13年を山と森と海に囲まれたヴェネトの州都、ヴェネチアで、その土地の海の幸、山の幸を使った伝統のヴェネト料理の経験を積んだ。イタリアで培われた伝統の食文化にこだわり、本場で過ごした17年間で蓄えてきたレシピを活用し、より本来のイタリアらしい雰囲気と料理をご提供して参ります。長いイタリアでの豊富な経験を生かしながらも、日本を離れていたからこそ日本の食材をより深く知りたいという想いから、自ら日本全国50か所以上の生産者を訪れ、日本食材に向き合い、その食材の魅力を存分に引き出すイタリア料理を探求し続けている。


INFORMATION

東京都千代田区大手町1-5-6 [google MAP🔗
Tel:03-5224-3339(直通)
E-mail:amantokyo.fbres@aman.com
営業時間:ランチ 11:30~15:30(L.O. 14:00)ディナー 17:30~22:00(コースL.O. 20:00、アラカルトL.O. 21:00)
定休日:無休
公式WEB


▶︎2023 ITALIAN WEEK 100 パスタ未来形メニュー Read more ≫
アルヴァ(アマン東京)
「オーガニックアインコーン全粒粉のタリアテッレ岡山県産竹の谷蔓牛のラグー」

ボロネーゼにした、竹の谷蔓牛(たけんたにつるうし)和牛の基礎をなす血統の元祖で、「日本最古の蔓牛」として知られています。そしてボロネーゼに最適化したパスタのタリアテッレは、最古の古代小麦アインコーンを使用しています。品種改良が加えられた近代の小麦と比べてグルテンの含有量が大変少なく、豊富な栄養化の豊富さが特徴の小麦です。時代と共に技術や科学の発展で進化を遂げてきた「小麦」と「和牛」、今回はその原点に立ち返り、パスタの未来形として誕生しました。失われつつある素晴らしい食材を未来に残す。食べ親しみ思い出として蘇る。イタリア食文化へのリスペクトのもと、原点に立ち返り誕生したエグゼクティブシェフ平木渾身の逸品。

今回は3種類しかいない和牛の始祖のひとつといわれる谷蔓牛(たけのたにつるうし)を使用しています。今や失われつつある蔓牛ですが、復興させようとしている団体もあります。広く知っていただくことで蔓牛の復興にもつながりますし、和牛の原点回帰にもつながります。今回はボロネーゼというよりもラグーという言葉が合うかと思います。といいますのもボロネーゼというと調理法や材料にいろいろと決まりがありますので。同じくパスタにもアインコーンというイタリア産の最古の古代小麦を使っています。とてもストレートな料理ですが、こうした食材は今後も未来に残していかないといけない。そういう思いから生まれた料理です。

▶︎2024 ITALIAN WEEK 100 発酵の可能性メニュー Read more ≫
「バーニャカウダ 青森県産黒大蒜と自家製アンチョビ 季節野菜」

今年長崎県を訪れた際に見たイワシの塩漬けの製法が、アンチョビの工程と似ていると感じました。この体験をヒントに、発酵食品であるアンチョビを活かした、イタリア・ピエモンテ地方で親しまれている「バーニャカウダ」を選びました。国産のカタクチイワシを使った自家製のアンチョビをベースにし、青森県産の発酵大蒜と北海道産の発酵バターを合わせることで、3つの国産の発酵食品が織りなす複雑で濃厚な味わいを実現しています。野菜は、あえてシンプルに生のまま提供いたします。新鮮で旬の素材を最大限に活かし、素材本来の風味を引き立てるよう工夫を凝らした一品です。野菜は、自分の足で生産地へ赴き、石川、山形、静岡、山梨の、こだわりの強い生産者から直接仕入れています。発酵食品の深い味わいと、厳選した旬野菜のハーモニーをお楽しみください。

発酵の可能性を追求することで、新たな味や風味を発見できることは非常に魅力的です。しかし、イタリアでは、古くから受け継がれてきた発酵技術や伝統が非常に大切にされています、この伝統は尊重しなければいけないと思います。また日本の発酵文化も非常に深い歴史を持ち、そこから学ぶことが多いはずです。イタリアと日本の発酵技術や文化を相互に学び、その共通点を探り、発酵の可能性を広げることで、新しい価値をもたらすことができるのではないかと考えています。伝統を守りつつ、革新を求める姿勢が、発酵という分野でさらなる発展を生み出す鍵になると思います。

▶︎2025 ITALIAN WEEK 100 パスタの存在証明メニュー Read more ≫
「カカオニョッキ 国産経産牛のコーダ アッラ ヴァッチナーラ」

最小限の素材から、最大限の感動を生む。イタリアの「捨てる部分を最高のご馳走へと昇華する」精神、日本のサステナブルな命(経産牛)の物語、そして自分自身のパスタ観を、一皿に結晶させました。私の料理人人生の原点は、北イタリアで出会ったセージバターのパスタ。シンプルで静かな感動こそが、私の「Pasta Identity」の核です。今回の一皿では、その原点をセージバターで和えた自家製ニョッキに込め、ローマ伝統の‘コーダ アッラ ヴァッチナーラ’から着想を得て、牛の尾を使った煮込みソースと組み合わせました。‘コーダ アッラ ヴァッチナーラ’は、「捨てる部分を最高のご馳走へと昇華する」イタリアの伝統料理。「Dalla testa alla coda(頭から尻尾まで)」「Non si butta via niente(何も無駄にしない)」
――すべてを活かしきるこの精神は、私自身のサステナビリティへの姿勢とも重なります。ソースにはローマの古いレシピに敬意を込めて白ワインを使用し、経産牛の旨味、野菜、トマトの甘みをやさしく引き出しました。マツの実とレーズンは古典のアクセントとして、フレッシュセロリは清涼感と彩りを添えています。古典レシピでは煮込みの仕上げにカカオを加えますが、今回はその精神に敬意を払いながらも、ソースの純度を保つためにカカオは加えず、代わりにニョッキの生地にごく少量を練り込むというアプローチを選びました。これは、古典の骨格を守りつつ、「一皿の中に二つの時間を共存させる試み」。伝統の姿を残しながら、カカオのニュアンスを生地の奥に織り込んでいます。イタリア料理の精神とサステナビリティ、そして自分自身のPasta Identityを、この一皿に託しました。