ARMANI / RISTORANTE
アルマーニ / リストランテ
2023年度IW100「ベスト・レストラン賞」受賞店
ガンベロ・ロッソ年間最優秀シェフに輝く実力派
イタリアを代表する高級ファッション・ブランド「アルマーニ」が直営する最高級リストランテ。銀座中心部に立つ「アルマーニ / 銀座タワー」の10Fにあり、夜の銀座を見下ろすその眺望は実に美しいが、このレストランを訪れるゲストたちの目的は一にも二にもエグゼクティブシェフ、カルミネ・アマランテが作り出す芸術作品のように美しく美味なる料理の数々だ。ナポリ出身のカルミネ・シェフはイタリアやスペインの名店でキャリアを積んだ後2018年に来日。2020年夏より「アルマーニ / リストランテ」の厨房を任されると瞬く間に結果を出し、2022年にはイタリアのレストラン・ガイド「ガンベロ・ロッソ」が選ぶシェフ・オブ・ザ・イヤーに選ばれたほどの実力者。現在日本におけるコンテンポラリー・イタリアンの世界で最も注目されているシェフの一人だ。
そのカルミネ・シェフの最新料理をいくつか紹介してみたいと思う。最初に登場するフィンガーフードのアミューズ・ブーシュの中でもカルミネ・シェフが特に力を入れているのが自家製の和牛ブレザオラのブリオッシュだ。ブレザオラとは北イタリアで作られる牛肉の生ハムだが、カルミネ・シェフは脂が控えめなA4ランクの和牛を山椒と昆布でマリネし3か月エイジング。自分だけの極上のブレザオラを作り出し、柑橘マヨネーズ、白トリュフをふんだんにトッピング。エディブルフラワーのサブレにはGAのロゴが刻まれている。
パスタならば「トルテッロ・ジェノヴェーゼ」は外せない。ジェノヴェーゼとはタマネギと豚肉をじっくりと煮込んだナポリの家庭料理なのだがカルミネ・シェフは和牛のスジ肉と玉ねぎを12時間蒸し煮にしてジェノヴェーゼを作り、手打ちパスタ「トルテッロ」の中に詰めてある。一般的にイタリアでは北に行くほど卵黄と軟質小麦を使った手打ちパスタが多くなり、南に行くほど硬質小麦を使った乾燥パスタが多くなるのだが、カルミネ・シェフは南イタリアのナポリ出身とはいえ手打ちパスタを常にメニューに加える。それはいかにパスタのアイデンティティを崩さず、しかも芸術的領域まで高めるかという、日々たゆまない思考を積み重ねた結果なのだろう。パルミジャーノのフォンドゥータとタマネギをキャラメリゼしたソースと仕上げに黒トリュフ。とろけるような和牛とパルミジャーノの相性はとてもよく、口溶けの良さがたまらない。
もうひとつナスのペーストを詰めたトルテッロも特筆すべき料理だ。一晩寝かせたリコッタ、トマトのコンフィ、マイクロバジルを従えたその姿は、まるで小さな花束のよう。プレゼンテーションは可憐かつ繊細ながらもナス、バジル、リコッタチーズ、トマトソースの組み合わせはシチリアの伝統料理「ノルマ風パスタ」である。「ノルマ」とはシチリア出身の作曲家ヴィンチェンツォ・ベッリーニの代表的なオペラで、かつてこのパスタを食べたシチリア人が、あまりの美味しさに「これはノルマのように素晴らしい!」と叫んだことに由来するといわれている。ファインダイニングでありながらも伝統料理には限りない愛情と敬意を示す、カルミネ・シェフらしいパスタだった。
最後のドルチェも秀逸で、ナポリを代表する味の「スフォリアテッラ」と「ババ・ナポレターノ」は機会があれば是非。「スフォリアテッラ」は本来ラードを使ったサクサクの生地にリコッタクリームを詰めてあるのだが、カルミネ・シェフはクリームのみでその味を再現。シナモン風味のクランブルがスフォリアテッラの食感を再現している。「ババ・ナポレターノ」もナポリの菓子店では必ず見かける代表的なドルチェで、弾力あるスポンジ生地にシロップをたっぷりと吸い込ませ、最後にダークラムをかけて食べる。通常菓子屋でも生地は2回発酵させてから焼くのだが、カルミネは3回発酵させる念の入れよう。ことナポリ伝統料理に関してはいっさい手を抜かずに味も忠実に再現しているところにカルミネの郷土愛を感じる。
コロナが明けた2023年以降、カルミネ・シェフは世界的な有名シェフを招待し、コラボディナーの開催にも力を入れている。2023年にはバルセロナ「エニグマ」のアルベルト・アドリア氏、ミラノ「ノブ アルマーニ」のアントニオ・ダンジェロ両氏を招いた世界巡回イベント「アルマーニ・レストランツ・インシエメ」を開催したり、シンガポールの「ジャーン by カーク・ウエスタウェイ」のカーク・ウエスタウェイとのコラボディナーを開催したこともまだ記憶に新しい。カルミネ・シェフが目指すところは日本から世界に発信するイタリア料理のファイン・ダイニング。ラグジュアリーな空間と、まばゆいばかりのカルミネ・シェフの料理との絶妙なるコンビネーション。「アルマーニ / リストランテ」で過ごす一夜は、イタリアに酔いしれる特別な時間となるはずだ。
2024 ITALIAN WEEK 100 発酵の可能性メニュー
Katsuo marinated with Miso which Carmine made with Italian Beans 伝統的な日本料理である鰹の藁焼き。鰹を藁焼きすることにより香ばしい味わいと香りを纏わせた、旨味が濃厚な旬の鰹。そこにエグゼクティブシェフ カルミネ・アマランテらしい、トマトをベースにしたソースを。トマト、ヘーゼルナッツやアーモンドを使用したソースには、生姜を隠し味に加え、さっぱりとした後味に仕上げました。脂の乗った戻り鰹を使用したこの料理は、カルミネが高知で得た経験を基にした一皿。2023年に、カルミネが麹を使って作り、約1年経ったイタリアの豆を使った味噌で鰹をマリネしました。30分~1時間味噌に漬け込むことで、鰹の旨味を引き立て、しっとりとした食感に。ソースにも少量の味噌を隠し味として使っています。
発酵の可能性に対するシェフの考え
私の出身地であるイタリア南部では発酵食材を使うことはあまり一般的ではありませんが、日本の食文化には味噌、醤油、酢、酒など、多くの発酵食品があります。私は日本の食文化から学ぶことが非常に多く、最近では発酵食材を取り入れる機会が増えています。これは、私の料理フィロソフィーと融合させる新たなチャレンジでもあります。発酵の深い味わいを活かし、イタリア料理に独自のひねりを加えることで、より豊かな食体験を提供できると信じています。これからも、発酵の力を借りて、料理の可能性を広げていきたいと思います。
chef profile
カルミネ・アマランテ
CARMINE AMARANTE
1990年ナポリ生まれ。イタリアとスペインの名店で修行したのち2018年に来日、「ハインツ・ベック」にてエグゼクティブシェフを務めたのち2020年夏より「アルマーニ / リストランテ」エグゼクティブシェフに就任。2022年度ガンベロ・ロッソが選ぶ世界年間最優秀シェフ賞受賞。2023年度ITALIAN WEEK100「ベスト・レストラン賞」受賞。
INFORMATION
東京都中央区銀座5-5-4 アルマーニ / 銀座タワー10階・11階[google MAP🔗]
Tel:03-6274-7005
E-mail:armaniristorante@giorgioarmani.co.jp
営業時間:ランチ 11:30〜15:00(L.O. 14:00)ディナー 18:00〜23:00(L.O. 20:00)
定休日:月曜のみ(2024年10月1日から)
➣ 公式WEB