イタリアンウイーク100の理念
2023年度が初開催となったITALIAN WEEK 100(イタリアンウイーク100)は、日本におけるイタリア料理の価値向上を目的とした大型レストランイベントです。日本にイタリア料理が浸透して以来30年以上になり、多くの人々に愛されているにもかかわらず、他ジャンルの料理に比べると相対的評価が及ばない一面があり、またガストロノミーの世界において日本のイタリア料理に光が当たる機会は少なかったことも事実です。しかし現代の日本には全国津々浦々、実に素晴らしいイタリア料理店が数多くあります。こうしたキラ星のごとき輝きを持つレストランとシェフ、すなわち日本のイタリア料理のレベルの高さと底力を国内外に広く紹介したい、それがITALIAN WEEK 100の根底を支える哲学です。
参加するのは北海道から沖縄まで日本を代表する100のTOPイタリア料理店ばかり。第2回となる2024年度も同じく日本全国から事務局が選定した、個性豊かな100のイタリア料理店が参加し、2024年11月1日(金)~30日(土)の1か月間に渡って開催されます。同期間中、参加レストランではITALIAN WEEK 100限定メニューが提供される他、年間を通じてさまざまなテーマのサテライトイベントや人気投票なども開催予定です。
発酵の可能性 Power of Fermentation
2024年度の公式テーマは「発酵の可能性」です。日本とイタリアはともに幅広い発酵食品を誇る国であり、特に日本のさまざまな発酵食品はイタリア料理との親和性が非常に高い。2023年の統一テーマ「パスタ未来形」から俯瞰してみると、「発酵」とはパスタとパンの分岐点であり、ローマ時代においては文明開花の象徴でもありました。発酵とはイタリア料理史においては原始の料理から文明的料理へと変貌を遂げる重要なターニングポイントだったのです。
アワードと各部門表彰
ITALIAN WEEK 100 審査委員会は、イタリア本国のフードインフルエンサーや、日本国内のメディア、グルメジャーナリスト、イタリア関連団体等のイタリア料理の有識者から構成されます。2024年1月には各受賞シェフが参加したアワードが開催され、以下8つの賞が表彰されました。
・ベストレストラン賞 アルマーニ / リストランテ(東京)
・ベストパスタ賞 by バリラジャパン 山本鉄己シェフ/イル・テアトリーノ・ダ・サローネ(東京)
・ベストシェフ賞 高尾僚将シェフ/TAKAO(北海道)
・グランシェフ賞 笹島保弘シェフ/イル・ギオットーネ(京都)
・ベストプロセッコDOCスパークリングワインレストラン賞 アンティカ・オステリア・デルポンテ(東京)
・ベストイノベーティブ賞 by サンペレグリノ&アクアパンナ タカヤマ(京都)
・ベストローカル賞 灯りの食邸 コカジヤ(新潟)
・ヤングシェフ賞 平田明珠シェフ/ヴィラデラパーチェ(石川県)
地方創生とフードツーリズムへの貢献
参加100店舗はいわゆる高級イタリア料理店に相当するリストランテが対象であり、そのジャンルはイノベーティブからトラディショナルまで様々です。これはイタリア料理という広い共通概念のもと、たとえ表現形式は異なるとしても同じイタリア料理を志すレストランおよびシェフの料理と哲学をより多くのみなさまに知っていただき、体験していただきたいという願いが根底にあるからです。
また、対象地域は北海道から沖縄まで全地域(8エリア区分)を設定し、地方で活躍するレストラン、シェフとともに、イタリア料理を通じたフードツーリズムにも貢献します。これは近年ムーブメントとなりつつあるローカル・ガストロノミーが具現化した形態が、地方に根ざし、地方の食材をイタリア料理に昇華させたローカル・イタリアンである、と信じてやまないからであります。
本ウイークと連動して日本各地で推進されるサテライトイベントでは、地域特産食材を使った期間限定フェア、地域と地域をつなげるイタリアンコラボディナーなど、地方で活躍するレストラン、シェフとともに新たな地方創生とフードツーリズムの可能性を模索していきたいと思います。これらは11月開催本番のITALIAN WEEK 100と連動します。
日本ならではのイタリア料理とは?
いまわたしたちは日々当たり前のようにイタリア料理を口にしていますが、なぜこれほどまでに浸透したのか?を考えるのは非常に興味深いアプローチです。日本とイタリアは共に季節感に富んだ旬の食材を尊重している、というのがよく言われる共通項ですが、世界的に見てみると実は四季や旬の食材に恵まれた国というのは圧倒的に少数であり、日本とイタリアはその中でも稀有な存在なのです。
雪降る北海道とアルプス、歴史ある京都とフィレンツェ、活気あふれる大阪とナポリ、食材の宝庫であり外国料理の浸透も早かった九州とシチリア、長寿の島である沖縄とサルデーニャ、そしてさまざまな郷土料理店が集まり、トレンドの発信地である東京とミラノ。料理の地方性と点においてこれほどまでに多くの共通項を持つ国は日本以外ありません。それだけに日本では各地の伝統食材や旬の食材を使ったイタリア料理を生み出すことが可能なのです。
そして何よりもそうしたクリエイティビティの原動力となるのが日本各地で活躍するシェフたちであり、ITALIAN WEEK 100はそんなシェフたちと思いを共有し、その個性あふれる仕事により明るいスポットライトを当て続けたい。それが2024年度ITALIAN WEEK 100の理念です。
2024年2月
ITALIAN WEEK 100 ディレクター 池田匡克