Senti.U
センティウ

大隅半島の魚介を活かしたNature Gastronomy


内田氏の世界観を「センティ」=体感する

ローカルガストロノミー的観点に立って俯瞰してみると、九州という地域はオリジナリティあふれるイノベーティブ・イタリアンにとっては理想的な土地なのかもしれない。気候は温暖で野菜、海産物などの食材に恵まれ、歴史的に見ても外国との交流が盛んで独自の料理文化を形成している。そんな九州にはあちこちに注目すべきイタリア料理店が点在しているが、鹿児島県鹿屋市にある「センティウ」もその一軒だ。

単にアクセスだけを考えれば遠方から訪れるにはなかなか困難な場所にある。しかしイタリアの地方にあるレストランにはのきなみ「地理的ハンデをメリットに変える」という金科玉条がある。それはイタリアという国がヨーロッパで最も生物多様性に富み、食材や料理の郷土性が際立っているからなのだが、その観点に立つならば日本も同様。特に「センティウ」では内田康彦オーナーシェフによる、大隅半島の豊かな海産物を多用した「ネイチャー・ガストロノミー」が堪能できるのだ。鹿児島市内からならば、桜島がある錦江湾を右手に見ながら車を走らせること約2時間。大隅半島のアップダウンをいくつも超えてようやく「センティウ」にたどり着く。佐賀県出身の内田シェフは東京でイタリア料理、フランス料理に従事したのち渡伊。帰国後は三重、兵庫のリストランテをへて地元九州に戻る。

開業の地として選んだのが、夫人の故郷である鹿屋市だった。当初は「リストランテウチダ」という店名だったが2018年に菜園を備えた一軒家レストランとして移転。店名を「センティウ」とあらためた。店名はシェフのイニシャルであるUの字と「感じる」というイタリア語「センティ」を組み合わせた言葉。つまりは内田シェフの世界観を体感できるレストランとしてよりコンセプトを明確にして新たなるスタートを切ったのだ。内田シェフの料理哲学は明快にして簡潔、そして揺らぐことがない。それは地元大隅半島の食材で「センティウ」でしか食べられない料理を提供することだ。西に位置する錦江湾も、反対側の志布志湾も車でわずか距離。これまでに培った漁師や仲卸との関係でいくつもの港にネットワークを持ち、つねに最良の魚介類が手に入る。素材を尊重し大隅半島の四季を味わう、それが「センティウ」だ。

内田シェフは鹿児島県ではなく、大隅半島の食材であることにこだわり90%の食材が大隅半島のもの。そうした食材に対する敬意の念とともに、内田シェフならではの美意識が料理の細部にまで宿っている。例えば最初に登場した「アオリイカといもがら」は見目麗しくミニマル、そして透明感のある味わい。ねっとりとした食感のアオリイカを薄いベール状にし、といもがら=ずいきを包み込んだ料理。味付けは自家菜園のトマトのジュレとオリーブオイルというシンプルさ。「トラガニのリゾット」は地元でも希少となったトラガニとヘチマを無農薬米でリゾットに仕上げた料理。これも非常にナチュラルで、チーズ主体のイタリアのリゾットというより出汁を味わうスペインの魚介の米料理アロスに近い印象。近年、イタリアでもその場所でしかえられない食体験を重視した極小的地域料理「クチーナ・ミクロテリトリアーレ」が主流となりつつあるが、大隅半島そのものを感じ(センティ)る内田シェフの料理は例え2時間車を飛ばしても体験する価値がある。


chef profile

内田 康彦
YASUHIKO UCHIDA

佐賀県出身。 高校卒業後、飲食企業にて勤務後、 東京フレンチ、イタリアン店にて経験をつみ渡伊 帰国後、三重のリストランテを経て兵庫のオステリアで料理長を4年経験。 九州に戻り、妻の故郷、鹿児島県鹿屋市にて「リストランテウチダ」を開業。 2018年に同市内で移転。「センティウ SENTI.U」に改名。


INFORMATION

鹿児島県鹿屋市新川町587[google MAP🔗]
Tel:0994-44-6820
営業時間:ランチ 12:00~(L.O. 13:30)ディナー 18:00~(L.O. 20:00)
定休日:月曜日
※最大8名様
公式WEB